製造業の省エネが進まない、エネルギー消費効率は震災前よりも悪化:エネルギー管理(2/2 ページ)
国を挙げて省エネに取り組む必要がある中で、製造業の対策が不十分なことが明らかになった。エネルギーの消費効率は震災前よりも悪化していて、2013年度の生産量に対するエネルギー消費量は2009年度よりも7.6%増加している。新たにFEMSやIoTを活用したエネルギー管理が求められる。
3分の1の事業者が目標を達成できず
エネルギーを大量に消費する主要な産業の状況を比較すると、過去15年間にわたってエネルギー消費原単位を大幅に削減した業種がある(図3)。「パルプ・紙・紙加工品製造業」では10%以上も低減した。「鉄鋼業」でも8%弱の削減効果が見られる。これに対して「窯業・土石製品製造業」では15年前と変わらず、「化学工業」や「電気業」(電力会社など)でも2%未満の改善率にとどまっている。
さらに産業部門と業務部門を合わせた全事業者の直近5年間の状況をまとめると、エネルギー消費原単位が悪化している割合は25.3%にのぼる。省エネ法ではエネルギー原単位を年平均で1%以上低減させることを目標に掲げているが、この目標に満たない事業者は合計で36.7%になり、3分の1を超えている(図4)。実数にして3896社もある。
政府はエネルギー消費原単位が大幅に増加した事業者に対して聞き取り調査を実施して、指導や改善命令を出したうえで、命令に従わなかった事業者には罰則を与える方針だ。その一方で省エネ対策のための補助金をはじめ支援プログラムを拡充して、事業者だけではなく「家庭部門」や「運輸部門」を含めた国全体のエネルギー消費量を削減していく(図5)。
その中で産業部門にはFEMS(工場向けエネルギー管理システム)の導入によるエネルギー管理の徹底を求めていく考えだ。工場内の空調や照明に加えて、生産設備のエネルギー消費量もFEMSで管理・制御できるようにしてエネルギー原単位の削減を図る(図6)。生産設備にはセンサーを設置して、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の技術を駆使して生産設備の見直しを柔軟に実施することが目的である。
2030年のCO2排出量の目標を達成するためには、エネルギーミックス(電源構成)の改善と産業部門の省エネが大きな役割を担っている。これからの製造業にはFEMSとIoTの活用が極めて重要になる。国の補助金を利用して早期に導入することが望まれる。
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