水素ステーションの整備拡大に60億円、燃料電池車の普及を待つ:電気自動車
次世代自動車として期待される燃料電池車。普及には水素ステーションの整備が欠かせないが、その進捗(しんちょく)は遅れている状況にある。そこで自動車メーカー3社は水素ステーションの運営を行うインフラ事業者に対し、運営費を支援する施策を発表した。
トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの自動車メーカー3社は2015年7月1日、水素ステーションの整備促進に向けた支援内容を発表した。3社は同年2月に水素ステーションの整備運営を行うインフラ事業者に対して、合同で支援を行うことに合意。今回、その具体的な内容を明らかにした。
政府の水素ステーションの運営を支援する方針と協調するかたちで、水素供給ビジネスへの参入を決めたインフラ事業者に対して、水素ステーションの運営費の一部を支援する。支援対象者は「水素供給・利用技術研究組合(HySUT)」に加入している事業者のみだ。
支援の対象となるのは次世代自動車新興センター(NeV)の「燃料電池自動車新規需要創出活動補助事業」で認められた人件費や設備の修繕費などの運営費。支援額は運営費全体の3分の1までで、水素ステーション1基当たり年間1100万円が支援上限となる。2015年度の申請受付は2015年7月1日から開始する(図1)。
2011年に自動車メーカーとインフラ事業者は、「2015年までに国内に100カ所の水素ステーションを整備する」という計画を発表した。しかし2015年7月現在、その数は半数以下であり計画は大幅に遅れている状況にある(関連記事)。今回、支援内容を発表した自動車メーカー3社は、国内に100基の水素ステーションの整備される時期をめどに、2020年頃まで運営費の支援を行う予定だ。負担総額は50〜60億円を見込んでいる。
水素ステーションの整備が進まない理由の1つとして建設費用の高さが挙げられる。1基当たり3〜5億円の費用が掛かるといわれている。さまざまな補助金が用意されているとはいえガソリンスタンドと比較した場合まだまだ高額だ。さらに現時点では燃料電池車そのものの普及台数が少ないため、水素ステーションを建設したとしても稼働率は低く収益化も難しい。そのためインフラ事業者とっては運営費も大きな負担だ。
政府は2015年度から水素ステーションを運営するインフラ事業者に対して2200万円を上限とする補助制度を開始している。水素ステーション1基の運営費は1年間で3000〜4000万円と見られており、こうした政府の支援と今回の自動車メーカー3社による補助を利用すれば、インフラ事業者は運営費の大半を補える計算だ。
関連記事
- 燃料電池車、勝利の方程式は解けるのか
トヨタ自動車は2014年度中に燃料電池車を発売する。価格は700万円程度。電気自動車が既に実用化されているなか、なぜ燃料電池車なのか。燃料電池車が普及するカギは何なのか。水素社会は果たして訪れるのか。 - エネルギー問題を助ける「水素」、燃料電池車に弱点はないのか
トヨタ自動車が2014年12月15日に発売する世界初の量産型の燃料電池車「MIRAI」。燃料電池車はガソリン車や電気自動車と比較して、どこが優れているのか。優れていたとしても「水素」が弱点になることはないのか。小寺信良がエネルギーからMIRAIを見た。 - ホンダの燃料電池車、「小型化」「安全性」で目指すもの
ホンダは2014年11月17日、燃料電池車「Honda FCV CONCEPT」を公開した。2015年度中に国内で一般販売を開始する。小型化によってパワートレインをエンジンルーム内に収め、セダンタイプで5人乗りの車に仕上げたことが特徴だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.