太陽光発電の運転開始率は2割強、未着手の案件が過剰なルールを誘導:再生可能エネルギーの普及を阻む壁(2)(2/2 ページ)
固定価格買取制度の認定を受けた太陽光発電設備のうち、実際に運転を開始した割合は2割強にとどまっている。それでも政府は各地域の送配電ネットワークに接続できる上限を決めて、発電設備の出力を制御するルールを強化した。実効性は不透明ながら、事業者に対する規制は厳しくなる一方だ。
買取価格の低下と出力制御のダブルパンチ
とはいえ実際に出力制御を実施する可能性は当面のあいだ小さい。太陽光発電は天候によって出力が変動するため、地域全体の発電設備がすべて最大出力を発揮することはありえないからだ。しかも3地域の太陽光発電設備の運転開始状況を見ると、発電規模の大きい1000kW以上のメガソーラーは2〜3割程度しか稼働していない(図4)。
九州電力はゴールデンウイーク中に1日だけ、鹿児島県の種子島で太陽光発電設備のうち1カ所を対象に出力制御を実施した。その必要性があったことを示す需給状況の実績データは公表されていないが、今後も種子島のように送配電ネットワークを島内だけで運用する必要がある離島の場合には出力制御を実施する可能性がある。しかし九州全域で出力制御を実施することは現状では想定しにくい。
全国規模で太陽光発電設備の認定量と導入量の推移を見ると、2014年度は2013年度と比べて認定量が大幅に減った(図5)。買取価格が下がったことに加えて、年度末を前に出力制御のルール変更があったために、太陽光発電の開発計画にブレーキがかかったことは明らかだ。
これまでに認定を受けたものの、建設工事を開始できない案件も数多く残っている。政府は出力が400kW以上の太陽光発電設備を対象に認定の取り消しを進めているところだ。全国で1834件の発電設備が取り消しや廃止になり、合計すると613万kWになった(図6)。それでも運転を開始していない6000万kWを超える認定設備の1割程度に過ぎない。
2014年度からは出力が50kW以上の太陽光発電設備を対象に、一定期間後に認定を取り消す新しいルールを設けた。実施結果は今のところ不明だが、2012年度と2013年度の認定設備に対してもルールの強化が必要だろう。
運転開始を見込めない膨大な数の太陽光発電設備の影響で各地域の接続可能量が決まり、その結果として実際の導入量も抑制されてしまう現状は早急に解消しなくてはならない。政府と発電事業者の双方で取り組むべき緊急の課題である。
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