約170万kWhの省エネ効果、アルミ廃棄物から水素を生む「発電」装置が実用化へ:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
リサイクルが困難とされていたアルミ系廃棄物から水素を生成し、さらに発電も行えるシステムの実用化に向けたNEDOプロジェクトが推進中だ。同システムを開発したアルミハイテックが、朝日印刷の工場で実証に取り組む。廃棄物のリサイクルだけでなく、大きな省エネ効果も期待される技術だ。
分離→加熱→反応
アルハイテックが開発したシステムは、まずアルミ付紙パックなどの紙・アルミ・プラスチックの複合材廃棄物からパックパルパー(分離機)を利用してパルプ成分を取り出す。このパルプ成分は、トイレットペーパーなどに再利用できる。
次に残ったアルミ付プラスチックを、乾留炉で加熱してガス・オイルと高純度のアルミに分離。さらに分離回収したアルミを水素発生装置で特殊アルカリ溶液と反応させ、発生した水素を燃料電池などで利用して発電を行うという仕組みだ。
2014年12月のNEDOプロジェクトでは、このシステムの実用化に向けた課題である乾留炉と水素発生装置の規模拡大に取り組んだ。開発および実験機での実証を行った結果、乾留炉では空気量、温度、処理時間を調整することでプラスチックの不完全燃焼で生じる炭化物の付着が少ないアルミを回収することに成功。さらに水素発生装置では化学反応による連続的な水素供給を自動で制御する技術の確立に成功した(図2)。
システム販売も視野に
こうした成果を踏まえて行う今回の新たな実証では、システムの規模拡大時における運転条件の明確化や資源・エネルギーの回収率向上などに取り組む。現存の実験機は個々の装置が独立して稼働している状況だが、実用化に向けては各装置が連動することが求められる。今回の実証では、各装置に加え工場とも連動可能な形で運用し、経済性の検証も行う。
今後は実験の成果を受け、システムの製品としての完成度を高める。さらに導入顧客となり得る印刷工場、パッケージ工場、金属工場などに対し、装置販売、リース、運用支援、特殊アルカリ溶液の販売、装置メンテナンスを行う「システム販売」を展開していく方針だ。
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