廃止する石炭火力発電所に新データセンター、米グーグルが電力インフラを活用:スマートファクトリ
グーグルは米国のアラバマ州で10月に運転を終了する石炭火力発電所の跡地に、14カ所目のデータセンターを建設する。発電所から地域に広がる送配電ネットワークを利用して、再生可能エネルギーの電力を最大限に導入する方針だ。2016年の初めに着工して2年程度で完成する見通しである。
グーグルが新しいデータセンターの建設を決めた場所は、米国の東南部に位置するアラバマ州のジャクソン・カウンティ(Jackson County)にある(図1)。メキシコ湾から500キロメートルほど内陸に入った自然が豊富な地域で、テネシー川を中心に数多くの湖や池が点在している。その一角で運転中の石炭火力発電所がデータセンターの建設用地になる。
米国の東南部に電力を供給するテネシー・バレー・オーソリティ(Tennessee Valley Authority、略称:TVA)が運営する石炭火力発電所で、1952年の運転開始から60年以上にわたって発電を続けてきた。合計8基あった発電設備は2012年から順次廃止して、最後の7号機が2015年10月に運転を終了する予定だ(図2)。7号機の発電能力は46万kW(キロワット)あって、20万世帯分の電力を供給している。
グーグルは発電所の内外で稼働している送配電設備をはじめとしたインフラを再利用する計画だ。TVAの協力を受けながら、周辺地域の再生可能エネルギーによる電力を新データセンターに引き込む。グーグルはオフィスやデータセンターを中心に再生可能エネルギーの導入を推進中で、最終的には業務に使う電力の100%を再生可能エネルギーでまかなうことを目標に掲げている。
新データセンターは発電所の運転停止を待って、2016年の初めに工事を開始する。グーグルのデータセンターの建設には通常2年程度かかるため、2017年末から2018年にかけて稼働する見込みだ。既設のデータセンターでも利用している自社で開発した高効率のサーバーや水冷システムを導入することで、大量の電力を消費するデータセンターの省エネ対策も進める(図3)。
石炭火力発電所を運営してきたTVAは米国政府が出資する電力会社である。東南部の7つの州を対象に、税金を使わずに非営利の会社として、全米平均よりも安い価格の電力を提供している。19カ所の火力発電所と3カ所の原子力発電所を運転中だが、政府による火力発電の規制強化や経済性を理由に発電所の再構築を進めている。
アラバマ州のジャクソン・カウンティでは発電所の廃止に伴う雇用の減少をグーグルの誘致でカバーする考えだ。TVAによると、グーグルは新データセンターの建設に6億ドル(約720億円)を投入するのと合わせて、地域の雇用を促進する方針である。
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