軽油からLNGへ燃料転換、発電効率が57%に上昇してCO2も削減:蓄電・発電機器
2011年の東日本大震災による電力不足の早期解消を目的に設置された、「八戸火力発電所5号機」の燃料転換工事が完了した。燃料を軽油からLNGに切り替えることで発電効率が8%上昇し、CO2削減効果も見込める。
東北電力の「八戸火力発電所5号機」(青森県八戸市)は、このほど軽油から液化天然ガス(LNG)への燃料転換工事が完了。LNGによる運転を開始した。これにより発電効率の上昇とともにCO2削減効果も期待できる。
2011年の東日本大震災により、太平洋側に立地する火力発電所は甚大な被害を受けた。同5号機はこうした背景から電力供給力の早期確保を目的に稼働した発電所で、燃料に軽油を用いた出力27.4万kW(キロワット)のシンプルサイクル方式のガスタービン発電設備を採用し、2012年7月より営業運転を開始した(図1)。
その後2014年8月より環境負荷を低減する観点から、排熱回収ボイラー、蒸気タービンおよび発電機などを追加設置し、出力39.4万kWのコンバインドサイクル方式に変更して運転していた。
さらに同5号機は、より一層の環境負荷の低減および経済性向上を図るため、燃料を軽油からLNGに転換することが決まった。燃料転換工事は2013年10月からスタートし、2014年3月からJX日鉱日石エネルギーの「八戸LNG ターミナル」よりLNGの供給を受け、試運転を行いながら各種試験を進めてきた。
今回の燃料転換により、出力は39.4万kWから41.6万kWに拡大し、発電効率を示す熱効率も49%から57%に上昇している。さらに発電電力量当たりのCO2排出量も削減されることになる。なお、シンプルサイクル方式を採用して燃料に軽油を用いていた当時の熱効率は34%であり、大幅に効率がアップしていることが分かる(図2)。
東北電力は「同5号機は今回の燃料転換により、価格競争力に優れ、需給対応にも柔軟に対応できる高効率プラントとして、当社の供給力の一翼を担っていく」としている。さらにLNGをJX日鉱日石エネルギーから安定的に調達することにより、地域経済の活性化に貢献することも目指す。
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