太陽光を利用した植物工場、年間19回の収穫が可能で出荷量は430トン:スマートアグリ
スマートアグリカルチャー事業を推進しているオリックスが、長野県諏訪郡で新たに水耕栽培事業を開始する。本多園芸と共同で農業法人を設立し、太陽光利用型の栽培施設でサラダほうれん草やルッコラを生産する予定だ。年間19回の収穫で、合計約430トンの出荷量を見込んでいる。
オリックスと本多園芸は、このほど農業法人であるオリックス八ヶ岳農園を共同設立し、長野県諏訪郡富士見町で水耕栽培事業を開始すると発表した。太陽光利用型の栽培施設を建設し、2015年8月よりサラダほうれん草やルッコラなどの生食用葉物野菜の生産を開始する。
栽培施設内で行う水耕栽培により野菜の育成期間の短縮できるため、1年を通じて「4定(定価格、定品質、定時期、定量)販売」が行えるメリットがあるという。年間19回の収穫が可能で、合計約430トンの出荷を計画している。生産した野菜はオリックスグループの営業ネットワークを利用して、首都圏や中部圏の小売業および飲食業に向けて販売する。
オリックスは、2004年10月から和歌山県和歌山市で生鮮トマトを栽培する太陽光型植物工場を、2014年3月から兵庫県養父市でリーフレタスなどを栽培する完全人工光型植物工場を運営している。さらに2015年3月には富士通などと共同で、静岡県磐田市でICTを活用したスマートアグリカルチャー事業の立ち上げを検討することに合意するなど、同事業を推進している(関連記事)。
今回共同で事業を行う本多園芸は、長野県で約30年にわたって野菜の生産を手掛けてきた農業生産法人だ。サラダほうれん草などの葉物野菜の生産が中心で、首都圏および中京圏の百貨店や高級スーパーなどに販売している。
オリックス八ヶ岳農園ではこうした本多園芸の野菜生産ノウハウと、オリックスの植物工場の運営ノウハウを活用して、耕作放棄地の集約化などによる事業の大規模化、栽培設備の標準化および機械化を促進し、“植物工場”としての効率的な生産体制の構築を目指す狙いだ。
さらに良質な農作物の生産・流通を図り、地域雇用への貢献と地元農作物のブランド化を目指していく。なお、オリックス八ヶ岳農園の株保有率はオリックスが97%、本多園芸が残りの3%となっている。
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