電力の88%を火力で作る、燃料費は10社で年間7.3兆円:化石燃料に依存する日本の電力事情(1)(3/3 ページ)
2014年度に日本の電力会社が供給した電力のうち88%は火力だ。震災前に6割程度だった化石燃料の依存度が9割近くに上昇している。電力会社の燃料費は2010年度と比べて2倍に増加した。LNGと石炭の消費量が増えたためだが、2014年度の後半からLNGの輸入価格は下がり始めている。
天然ガスの消費量が増え続ける
火力発電の問題点は燃料費だけではない。地球温暖化の原因になるCO2排出量を削減するうえでも、国全体で火力発電の比率を引き下げる必要がある。政府が先ごろ策定した2030年度の電源構成(エネルギーミックス)の目標では、LNGと石炭の合計で発電量全体の5割強まで比率を下げる(図7)。石油は3%残る見通しだが、離島の発電設備をガスに切り替えていけばゼロにすることも可能だ。
火力以外はCO2をほとんど排出しない再生可能エネルギーと原子力になる。目標では再生可能エネルギーが22〜24%、原子力が20〜22%まで増えていく。ただし原子力は放射能汚染のリスクがあるために国民の理解を得られていない。目標を達成できるか不透明な状況が続く。
いずれにしても再エネ+原子力で44%まで比率を高めることが、地球温暖化対策として国を挙げて取り組まなくてはならない大きな課題である。目標どおりに電源構成を変えることができれば、発電に伴うCO2の排出量は2030年度には2013年度比で34%少なくなる。
化石燃料の中でも天然ガスの消費量は過去40年以上にわたって増え続けてきた。特に震災後は電力用に加えて都市ガスの消費量も伸びている(図8)。都市ガスの供給設備は電力よりも耐震性に優れているうえに、電力と熱の両方を供給できるガスコージェネレーションの需要が高まった。コージェネが拡大することは国全体の化石燃料の消費量を減らし、CO2排出量の削減にもつながる。
その一方で石炭の消費量を抑制しないとCO2の排出量は減っていかない。2000年まで石炭を最も多く使っていたのは鉄鋼だったが、電力の需要が伸び続けて現在は最大の消費源になっている(図9)。2030年までには現在の鉄鋼用の消費量よりも低い水準まで引き下げる必要がある。
2030年度の時点でも発電量全体に占める石炭火力の割合は26%を維持する見込みである。そのうえで石炭の消費量を減らすためには、発電効率の改善が重要なテーマになる。政府は次世代の火力発電の技術開発にも本腰を入れて取り組み始めた。
10年後の2025年をめどに、石炭火力とLNG火力に燃料電池を組み合わせて発電効率を引き上げる計画だ。既存の火力発電と比べてCO2排出量を2〜3割削減することが目標になっている。化石燃料をめぐる動きは国内と海外の両方で加速していく。
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