高安全性蓄電池を搭載した超小型EV、桑名市のスマートシティに導入:電気自動車
三重県桑名市の戸建分譲住宅地「スマ・エコタウン陽だまりの丘」(大和ハウス工業)にNTNのインホイールモーターシステム搭載の超小型モビリティが導入。同超小型モビリティにはエリーパワーのリチウムイオン電池が搭載された。
大和ハウス工業が展開する「スマ・エコ プロジェクト」は、街全体でエネルギーを「創る、蓄える、上手に使う」ことを目指した分譲住宅プロジェクトで、今回の三重県桑名市の「スマ・エコタウン陽だまりの丘」は5つ目のプロジェクトとなる。約100kW(キロワット)の街全体で保有する太陽光発電所により得た売電収入を戸建住宅のメンテナンスやタウンマネジメントに活用するという取り組みが特徴だ。また66戸全ての住居に家庭用リチウムイオン蓄電池、太陽光発電システム、HEMS(家庭用エネルギー管理システム)を搭載し、ネットゼロエネルギータウンの実現を目指している。
インホイールモーターの超小型モビリティ
これらの取り組みに加えて、導入を決めたのが、住宅地エリア内の手軽な移動手段だと期待されている「超小型モビリティ」である。軽自動車よりもコンパクトで環境性能に優れた2人乗り程度の車両で、新たなカテゴリーの乗り物として期待されている。スマ・エコタウン陽だまりの丘では、小回りが利くNTNのインホイールモーターシステム内蔵超小型モビリティを採用している(図1)。
NTNのインホイールモーター式超小型モビリティは、大きさが2740×1480×1700ミリメートル、タイヤサイズが155/55R14で、後輪2輪の駆動となっている。
リチウムイオン電池には、エリーパワーのリン酸鉄リチウム型リチウムイオン電池を採用。容量は128V・6.2kWh(キロワット時)、航続距離は50キロメートルで、最高速度は時速60キロメートルだとしている。充電時間については100Vで5時間程度を想定する(図2)。
エリーパワーは2006年設立の蓄電池ベンチャーで、大和ハウスや国際石油開発帝石、東レなどの大企業が出資している。同社のリチウムイオン電池は、正極材に安定性の高いリン酸鉄リチウムを使い、くぎ刺し(内部短絡)試験(図3)や圧壊試験(図4)、過充電試験でも発煙・発火しない、高い安全性が特徴となっている。また、10年で1万2000回の充放電後も80%以上の容量を保持する長寿命性も持つ。
車載向けで初めて採用
エリーパワーではこの安全性や長寿命性などが評価を受け、業務用および住宅用の蓄電池システムとしては多くの導入実績を持つ。ただ、超小型モビリティを含む「移動体への導入は当社としては初」(エリーパワー広報部)だという。現状では超小型モビリティに最適な出力の製品ラインアップしか用意していないが「今後は超小型モビリティでの利用において知見を集め、将来的には電気自動車(EV)への対応も進めていく」(同)としている。
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