プラスチックから水素を作って電力に、川崎市で水素社会に向けた実証開始:スマートシティ
使用済みプラスチックから取り出した水素と燃料電池で発電し、エネルギーとして利用する実証が川崎市の臨海部で始まる。水素社会の実現を目的に協定を締結した川崎市と昭和電工によるプロジェクトで、実証期間は2019年度までの予定だ。
川崎市と昭和電工は2015年7月28日、低炭素な水素社会の実現に向けた連携・協力について合意し、協定を締結した。昭和電工の使用済みプラスチックから水素を取り出す技術を活用して、低炭素な水素社会の実現を目指す方針だ。この協定に基づく取り組みの1つとして、使用済みプラスチック由来の水素を川崎臨海部でエネルギーとして利用する実証が始まる。
昭和電工は2003年より同社の川崎事業所で、アンモニア製造に使用済みプラスチックから取り出した水素を利用する手法を導入している。これは使用済みプラスチックを水素と炭酸の合成ガスにして、水素を取り出すという方法だ。合成ガスにする際に発生する炭酸はドライアイスに利用するなど、従来のアンモニアの製造方法に比べ環境負荷を大幅に削減できる手法だという。
今回行う実証実験ではこの昭和電工の技術を利用して、まず同社の川崎事業所で使用済みプラスチックから水素を取り出す。この水素をパイプラインで川崎臨海部の需要家に送り、純水素型燃料電池で電力に変換してエネルギーとして利用する(図1)。
川崎市は実証事業に参加する事業者間の調整、許認可取得関連の支援および実証事業への助言などの役割を担い、昭和電工は使用済みプラスチック由来の水素の製造・供給を行うとともに、サプライチェーンの実現に必要な技術の実証に取り組む。
昭和電工の使用済みプラスチックから水素を取り出す技術は、川崎市が推進する「川崎エコタウン事業」の一環として導入したものだ。両者は以前から同技術をアンモニア製造以外の領域に展開することを検討していた。その後、昭和電工の「使用済プラスチック由来低炭素水素を活用した地域循環型水素地産地消モデル実証事業」が環境省の「平成 27 年度地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択されたことを受け、両者の協力による今回の実証が決まったという。実証期間は2019年度までを予定している。
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特別セッション『川崎市が描く水素戦略』
川崎市長 福田紀彦 氏
東日本大震災以降、エネルギーの安定供給やCO2発生抑制と環境負荷の低減に向け「低炭素社会」の実現に向けた動きが急速に進んでいる。そこで注目されているのが水素だ。政府の「エネルギー基本計画」においても水素エネルギーの導入を拡大する方針が示されている。これに伴い、全国で水素社会の実現に向けた取り組みが進んでいるが、水素エネルギーの積極的な導入と利活用による「未来型環境・産業都市」の実現を目指しているが川崎市だ。同市では一体どんな「水素戦略」を描いているのか――川崎市長の福田紀彦氏にお話いただく。
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