バイオマス・石炭混焼発電所の建設に、煙・CO2・騒音の低減を求める:法制度・規制
山口県の防府市で計画中のバイオマス・石炭混焼発電所の建設に対して、山口県知事が環境影響の面で懸念を表明した。住居や学校が近くにあることから、発電に伴って排出する煙やCO2、騒音についても可能な限り低減するように求めている。石炭火力発電に対する風当たりが強くなってきた。
山口県知事が改善を求めたバイオマス・石炭混焼発電所は、産業用ガス大手のエア・ウォーターが中国電力と共同で進めているプロジェクトである。瀬戸内海に面した防府市(ほうふし)の沿岸地域にあるエア・ウォーターの工場に建設する計画だ(図1)。2016年12月に着工して、2018年度内に運転開始を予定している。
発電能力は11万2000kW(キロワット)で、電力会社の火力発電所と比べると小規模に入る。燃料には木質バイオマスを石炭と混合して利用する。木質バイオマスは山口県内で生産する未利用の間伐材や竹材を森林組合から調達するほか、海外からも輸入する方針だ。多種類の木質バイオマスを混ぜて燃焼できる「循環流動層(CFB:Circulating Fluidized Bed)」方式のボイラーを採用する(図2)。
エア・ウォーターと中国電力は2015年2月に合弁会社の「エア・ウォーター&エネルギア・パワー山口」を設立して、3月から環境影響評価の手続きを開始したところだ(図3)。環境影響評価は3段階の手続きが必要で、第1段階の「方法書」に対して山口県知事が7月27日に意見を提出した。
県知事の意見は主に3点ある。第1は発電所の近くに住居などが存在するために、ばい煙とCO2(二酸化炭素)の排出、さらに騒音の発生を懸念している。第2の点は周辺地域の大気や水質を適切に調査・予測して、環境に対する影響を低減する対策をとるように求めた。
第3の要望は木質バイオマスの必要量を確保することに加えて、県内産の森林資源を最大限に利用することである。間伐材や竹材の活用はCO2排出量を削減する効果だけではなく、地域の森林環境を保全するうえでも重要な取り組みになる。このため石炭と混焼する県内産の木質バイオマスの比率を可能な限り引き上げるように要請した。
こうした意見を受けて、エア・ウォーターと中国電力は環境影響評価の第2段階にあたる「準備書」の中に対策を盛り込む必要がある。さらに第3段階の「評価書」を経て建設の認可を受けるまでには1年強かかる見通しだ。
国の規制では、発電能力が11万2500kW以上の火力発電所を建設する場合に環境影響評価の対象になる。ただし山口県は条例で7万5000kW以上を対象に含めているため、他県では対象に入らない11万kWの発電設備でも環境影響評価が必要になった(図4)。
環境省は火力発電に伴うCO2排出量を抑制する目的で、2014年11月に「小規模火力発電に係る環境保全対策ガイドライン」を公表した。発電能力が1万〜11万2500kWの火力発電所を対象に、とるべき環境保全対策をまとめたものだ。特に排気ガスによって大気や水質に影響を与える可能性の大きい石炭火力を中心に対策の実施を求めている。
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