電力が届かない小学校に太陽光発電コンテナ、LED照明もパソコンも使える:蓄電・発電機器
インドネシアの標高1500メートルの村にある小学校では、創立から32年間も電力が届いていなかった。日本の官民連携プロジェクトを通じて、太陽光発電による独立型の電源コンテナを設置した。ようやくLED照明やパソコンを使って授業を受けられるようになり、水道設備も改善できた。
インドネシアの首都ジャカルタから東南へ150キロメートルほどの場所に、「マラバル公立第四小学校」がある。周囲を茶畑に囲まれた学校は1983年の創立以来、32年間にわたって無電化の状態が続いていた。
照明設備がないために、雨期になると教室の中は暗くなって授業に支障をきたしてしまう。パソコンやインターネットを使った授業もできず、教育の内容はおくれていた。そのうえ水道設備が不安定で、子どもたちは学校から200メートル離れた池まで水をくみに行かなくてはならなかった。
現地時間の7月30日に、太陽光で発電する独立型の電源コンテナが校舎の横に設置された(図1)。パナソニックが開発した「パワーサプライコンテナ」で、屋根の全面に太陽電池モジュールを搭載している。
コンテナの中には鉛蓄電池を使ったバッテリーと電力変換用のインバータを備えていて、太陽光で発電した電力を充電しながら校内に電力を供給することができるようになった(図2)。太陽電池モジュールは合計12枚で最大3kW(キロワット)の発電能力がある。バッテリーの容量は17kWh(キロワット時)で、日本の一般家庭の電力使用量(1日あたり10kWh)に換算して1.7日分に相当する。
太陽光による電力の供給が始まって、教室の中にはLED照明がついた。インターネットを使って映像を見ながら授業を受けることができる。さらに貯水槽とポンプを設置できたことで、子供たちが池まで水をくみに出かける必要もなくなった。コンテナの運用管理は地元のNGO(非政府組織)が担当する。
小学校に設置した太陽光発電コンテナはパナソニックの現地法人が製造した。太陽電池モジュールや鉛蓄電池はパナソニックの汎用製品を使っていて、新開発のコントロールユニットが鉛蓄電池の充電量に応じて電力の需給を制御する仕組みだ(図3)。
パナソニックは2014年7月に、ジャワ島にある国立小学校に最初の太陽光発電コンテナを設置した。同じジャワ島にあるマラバル公立第四小学校が2カ所目だ。コンテナは海上を船で輸送することも可能で、島の多いインドネシアの各地域に展開できる。このプロジェクトは外務省が推進するODA(政府開発援助)を通じて資金を提供して、官民連携で開発途上国の地域社会を支援している。
関連記事
- ニューヨークの屋台で太陽光発電、天然ガスとハイブリッドでCO2を60%削減
米国ニューヨーク市の名物である屋台が環境志向の店舗に進化していく。屋台の屋根に太陽光パネルを搭載して、天然ガスと組み合わせたハイブリッド発電システムで調理や冷蔵が可能になる。最新鋭の屋台500台を無償で提供する先行プログラムが5月11日に始まった。 - コンテナ輸送が可能な「地産地消」型水素エネルギー供給システム、川崎市で始動
東芝と神奈川県の川崎市は、自立型の水素エネルギー供給システムの実証実験を始動させた。太陽光発電による電力で水素を作り、その水素で電力と温水を供給する仕組みで、環境負荷の少ない新たなエネルギーシステムの実現に役立てていく。 - 地熱資源量が世界2位のインドネシアに、日本の技術で40MWの発電所を建設
住友商事と富士電機がインドネシア国営の地熱発電所に新しい発電設備2基を建設する。合計の発電能力は40MWにのぼり、2017年3月までに完成させる予定だ。インドネシアは地熱の資源量が米国に次いで2番目に多く、運転中の地熱発電所の規模も日本の2倍以上に達している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.