波長制御したLED照明でスタジアムをいつも青々と、ソニーが芝生事業に参入:LED照明
ソニーグループのソニービジネスソリューションは、以前から取り組むスタジアムビジネスの一環として、LED照明を使いスタジアムの天然芝の成長を促進する事業を開始する。
ソニービジネスソリューションは、ソニーの放送・業務用製品を中心としたソリューションを展開するソニーのグループ企業だ。放送局向け音響・映像機器を中心としつつ、医療関連や文教関連、映画関連など事業範囲を拡大。その事業の1つとして取り組むのがスタジアム関連ビジネスだ。
同ビジネスとして従来展開してきたのは、スポーツ中継カメラや中継スタジオ、セキュリティシステム、サイネージシステムなどだったが、今回新規事業として乗り出すのが「芝生の育成」だ。
スタジアム施設環境下では日照が不足することにより、発芽・成長時期か限られるという天然芝の課題に着目し、2012年に鹿島アントラーズ・エフ・シー、セキシン電機、信州大学とともに「ターフ・ファクトリー・プロジェクト」を発足。プロジェクトでは、年間を通して良好なピッチコンディションを保つことを目指し、LED照明装置による寒地型・暖地型の芝育成に関する研究を続けてきた。そこで植物栽培用LEDの照射条件などの検証を重ね、このほど天然芝成長促進用LEDシステムをセキシン電機と共同で開発・商品化に成功した。同システムを芝の上に設置し、一定時間LEDの光を照射することで、光合成に必要な波長の光が効率的に照射され、芝の成長を促進する効果が期待される(図1)。
これらの成果を基に、天然芝成長促進用LEDシステム「BRIGHTURF(ブライターフ)」として商品化し、スポーツターフ育成ソリューションサービスの提供を開始。同システムはJリーグの鹿島アントラーズ・エフ・シーに採用され、茨城県立カシマサッカースタジアムで2016年度シーズンから稼働を予定している(図2)。さらにこれを皮切りに国内スタジアムへの提案も積極的に推進していく方針だ。
同システムの具体的な特徴は、世界最高水準の発光効率を誇る植物の光合成に最適な赤色(波長660ナノメートル)・青色(波長450ナノメートル)LED素子を搭載し、芝の成長促進を低消費電力で実現。さらに赤青の独立調光、タイマー機能によりさまざまな芝種に対応した照射条件の最適化ができる。軽量アルミ合金フレームに、伸縮機能を備えたコンパクトな形状での運搬・収納が可能。また、芝面に損傷を与えないよう、接地圧を分散するタイヤ構造と屋外使用に耐え得る防塵防水機能を装備している。
LED光源には昭和電工製の植物育成用LEDチップを採用し、製品としてはセキシン電機が製造し、ソニービジネスソリューションが各スタジアム環境に応じた運転パターンの診断・コンサルティングなどを含めて、月額サービスとして提供する。ソニービジネスソリューションでは将来的にセンシング技術やデータマイニング技術を活用した芝の成長状態の解析サービスや環境条件に最適な芝管理方法を提案するアルゴリズムなどの開発も視野に入れている。
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