太陽光で稼働するデータセンター、直流給電で再生エネを有効活用:省エネ機器
多くの電力を必要とするデータセンターの省電力化に向けた取り組みの1つとして、直流給電を活用した給電ロスの削減がある。さくらインターネットは北海道石狩市に太陽光発電設備を建設し、同社のデータセンターに発電した電力の直流給電を開始した。
インターネットインフラサービスを提供しているさくらインターネットは2015年8月10日、北海道石狩市に「さくらインターネット石狩太陽光発電所」(図1)を建設し、同日より同社の「石狩データセンター」に送電を開始した。発電した電力を交流変換せずに直流のまま石狩データセンターへ送電し、専用のサーバルームに給電する。
石狩データセンターは2013年3月より、高電圧直流(HVDC)給電システムが商用環境で稼働中している。NTTデータ先端技術の「HVDC DC12V方式」を採用して、直流と交流の電力変換を減らすことで給電ロスを削減した。太陽光発電所で発電した電力は、HVDCサーバに直流のまま給電される仕組みだ。
東日本大震災以降、電気料金の価格が高騰している。こうした影響から大量に電力を消費するデータセンターを運営する事業者にとって設備の省電力化は喫緊の課題だ。石狩データセンターは全棟(計8棟を予定)稼働した場合、約4000ラック分のサーバが電力を使用する計算になる。そこで電力を売電することなく完全自社利用ができると考え、太陽光発電設備を建設したという。
さくらインターネット石狩太陽光発電所の出力は200kW(キロワット)で、380V(ボルト)で給電を行う。年間の発電量は21万kWh(キロワット時)だ。
状況に応じて最適な電源を選択
石狩データセンターは、給電状況を自動で判別して最適な電源からサーバに給電を行う「優先制御システム」も備えた。これは天候などの問題で太陽光発電が行えない場合には商用の交流系統から給電を行い、停電などの場合は非常用バッテリーから給電を行うなど、状況に応じて優先度を付け、最適な電源から給電を行うシステムだ(図2)。
さくらインターネットは、超電導直流送電およびその関連技術にする試験研究に取り組む石狩超電導・直流送電システム技術研究組合の一員でもある。同組合は先日、世界最長級となる500メートルの超電導直流送電に成功したと発表(関連記事)。2015年9月からは石狩データセンターに太陽光発電設備による電力を、高温超電導ケーブルで直流送電する実証も予定している。
関連記事
- データセンターが変わる、NTTが380Vの高圧直流給電に本腰
2016年度からNTTはグループの通信ビルやデータセンターで、HVDCシステムの本格導入を開始する。これを受けてNTTファシリティーズは、サーバに380Vの直流を給電するHVDCシステム構築サービスを2014年8月から開始した。500kW規模の案件では、約1億7000万円で構築できるという。 - サーバへの給電は380V直流へ、三菱電機がHVDCシステムを発売
データセンターの消費電力削減は待ったなしだ。空調の最適化が関心を集めているものの、肝心のサーバに電力を送る装置の改善も必要だ。三菱電機は380Vの直流出力が可能な給電装置を開発、2015年度には20億円の売り上げを見込む。 - データセンターの電力を30%も削減、直流電源でサーバーを最適運用
震災以降に企業からの需要が増大しているデータセンターだが、大量の電力を消費する問題を抱えており、有効な節電対策が求められている。コンテナの中にサーバーと直流電源装置、蓄電池まで搭載したモジュール型のデータセンターで、消費電力を30%削減する試みが進んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.