バイオマスで「創造的復興」を果たす、生ごみから電力・温水・肥料を作る:自然エネルギー(2/2 ページ)
宮城県の南三陸町が「バイオマス産業都市」に生まれ変わろうとしている。地域の資源を生かしたバイオガス事業と木質ペレット事業を中核に、新たな産業で雇用を創出する「創造的復興」を推進していく。町内で発生する生ごみを利用したバイオガス発電が第1弾として2015年内に始まる。
10年後に100人の雇用創出を目指す
発電と同時に生まれる熱は温水にして、バイオガス施設のほかに近隣の温浴施設や温室ハウスなどに供給する予定だ。さらにバイオガスを生成した後に残る液体を肥料にして田んぼや畑に散布する。バイオガスで地域の資源を循環させる試みである(図4)。バイオガス施設は2015年内に運転を開始して、15年間にわたって電力・温水・肥料の供給を続けていく。
今後10年以内にバイオガス施設を増設することも計画している。町内の食品工場などから出る廃棄物を含めて、ほぼ全量をバイオガスに転換することを目指す。その一方で5年以内に木質ペレット事業も開始する。町内に製造施設を建設して、森林などで発生する残材から燃料用のペレットを作って地域内に供給する計画だ(図5)。バイオガスと合わせてエネルギーの地産地消を拡大する。
南三陸町の試算ではバイオガス事業と木質ペレット事業で年間に約2億円の規模になり、関連事業を含めた経済効果は10億円程度を見込んでいる。雇用創出効果は2つの事業で40〜50人、関連事業を含めると90〜110人を想定している。
関連事業は自然放牧型の酪農などを検討中だ。家畜の排せつ物をバイオガス施設で処理すれば、副産物の液体肥料を牧草の生育に利用することができる。このほかにバイオガスと木質ペレットの熱を利用してサケの養殖や薬草の栽培を事業化する構想もある。南三陸町が目指す創造的復興は全国の農山漁村のモデルケースになる期待がかかる。
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