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容量はリチウムイオン電池の6倍以上、「リチウム空気電池」の実用化に一歩前進:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構の陳明偉教授らが、一般的なリチウムイオン電池の6倍以上の電気容量を持ち、100回以上繰り返し使用が可能なリチウム空気電池の開発に成功した。
エネルギー利用効率72%を達成
今回、同研究グループは新たな正極材として、酸化ルテニウムをナノ粒子をグラフェンで挟んだ窒素ドープナノ多孔質グラフェン電極を開発し、リチウム空気電池に利用した(図3)。これによりナノ多孔質グラフェンが持つ大きな比表面積、空隙率や電気伝導性を損なうことなく、大きな電気容量(2000mAh/g)と充電電圧(4.0V以下)を同時に実現したという。
さらにこのリチウム空気電池の充放電の繰り返し試験を行ったところ、窒素ドープナノ多孔質グラフェンはフル放電したときに電極単位重量当たり最大8000mAhの電気容量を持つ。電極単位重量当たり電気容量2000mAhで固定した場合には100サイクル以上充放電が行える耐久性を持つことが分かったという。
また充放電時の電流密度を変化させる実験を行った結果、従来のリチウム空気電池よりも充電スピードが速く、従来の50%を大きく上回る72%を超えるエネルギー利用効率を示した。
今回の結果の成果についてJSTは、高容量、高効率なリチウム空気電池の正極材料の実用化に向けた重要な成果としている。その一方で貴金属であるルテニウムを少量ながら触媒に使用しているためコストが高いという点や、充電時の過電圧が大きいなどの課題は残っている。研究グループは今後、今回開発した電極の実用化を企業と模索していく方針だ。
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