“うまみ”を引き出す「スチーム装置」、電気とガスのハイブリッドで35%省エネ:蓄電・発電機器
「スチーム機能」を売りにした電子レンジなどの家電製品を見かけることが多くなった。高温の水蒸気は食品のうまみを閉じ込めたり、加熱時間を短縮できたりするメリットがあり、大型の水蒸気発生装置が食品加工装置や金属加工を行う工場で利用されている。中部電力、東京ガス、直本工業は、このほど省エネ性能を高めた「ハイブリッド式過熱水蒸気発生器」を開発した。
中部電力、東京ガスと直本工業は工場の生産ラインで、加熱や乾燥などに用いられる電気とガス双方の特徴を生かした「ハイブリッド式過熱水蒸気発生器」(商品名:ハイブリッドSHS)を共同で開発した(図1)。
新開発品は電気の優れた温度制御性とガス燃焼の高効率な加熱の特徴を持ち、ハイブリッド方式とすることで従来は困難だった消費電力の抑制と精密な温度制御の両立を実現している。今後、食品工場や自動車工場などを対象にオーブンなどの工業用の加熱装置に組み込み、2015年11月から直本工業から発売する。
過熱水蒸気は100度以上の高温の水蒸気のことで加熱調理時に無酸素状態で食品のうま味を閉じ込めることによる風味向上効果や金属、樹脂・セラミック等の非金属を短時間でできるといった特徴があり、工場や家庭のオーブンなどで利用が拡大している。
工業用途で用いる過熱水蒸気発生器は主に電気式とガス燃焼式があるが、電気式の場合は精密な温度制御が可能なものの、消費電力が大きくなることが課題だ。一方、ガス燃焼式は、ランニングコストは小さくなるが温度制御性に問題があった。
新開発品はガスユニットにメタルニットバーナーを採用し、効率的に燃焼排ガスと飽和水蒸気が熱交換できるようバーナーの形状を新たに考案。またガスユニット内の蒸気配管を二重らせん構造にすることで伝熱面積を確保しつつコンパクト化を図った。制御システムも低負荷運転時は電気ヒーターで単独運転し、中負荷・高負荷運転時はガスバーナーと電気ヒーターを併用で運転するなど、設定温度に合わせ最適な運転割合で高精度温度制御を両立する制御を実現している(図2)。
その結果、ガスバーナーと電気ヒーターを併用することで消費電力を抑えることができるようになった。また、電気とガスの負担分担の割合の最適で設定温度(最高温度400度)に対し±(プラスマイナス)5度の十分な精度の温度制御が可能だ。さらに、一次エネルギー消費量が電気式の過熱水蒸気発生器に比べて約35%低減することができる。コンパクト設計により、オーブンや乾燥装置などへの組み込みも容易になっている。
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