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超電導による“世界初”の物理蓄電システムが山梨県で稼働、電力安定化の切り札へ蓄電・発電機器(4/4 ページ)

山梨県や鉄道総合研究所らは、超電導技術を駆使し、再生可能エネルギーの発電変動を吸収できる「次世代フライホイール蓄電システム」を開発。現在稼働している1MWソーラーと連結し電力系統接続による実証を開始した。超電導を使ったフライホイール蓄電システムを実際に電力系統に接続して実証するのは「世界初」(山梨県)だという。

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1MWのメガソーラーの変動を吸収

 さまざまな技術により実現した次世代フライホイール蓄電システムだが、実証実験では既に山梨県で稼働している実証試験用太陽光発電所との連系を行う。太陽光発電所は同蓄電システムを設置した米倉山のメガソーラーで、2014年度に完成した。多結晶型太陽電池3960枚を設置した950kW(キロワット)の太陽光発電所と、フィルム型アモルファスシリコン太陽電池572枚を設置した52.6kWの防草シート型太陽光発電所と連系する(図6)(図7)。

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図6 実証実験で連係する950kWのパネル型太陽光発電所
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図7 実証実験で連係する52.6kWのシート型太陽光発電所

 次世代フライホイール蓄電システムの出力は300kWで、太陽光による約1MW(メガワット)の出力が天候によって変動しても、電力を吸収して安定化させられるという。また実証実験では300kWの蓄電能力としたが「このシステムの利点は、モーターによる出力と、フライホイールによる蓄電能力を分けて作れることだ。そのため、大きな出力が必要な場合は大きなモーターを採用するということや、蓄電容量を上げたければフライホイールの数を増やすというようなカスタマイズを行える。また、同じシステムを接続することで蓄電容量を上げることも行えるため、幅広い用途への活用が期待できる」と長嶋氏は述べている。

数年後には実用化へ

 同システムは実証システムであるため現状ではかなり高額であるが「通常の蓄電池システムに対してコスト競争力を持つためには、1基当たり2000万円程度にすることが求められている。ここに向けてコスト力などを強化していく」(堀内氏)。

 コスト競争力などを実現しつつ、電力以外の領域への展開も検討する。早期に実現できそうなのが鉄道の変電設備などへの導入だ。「既に一部の鉄道会社ではフライホイール蓄電設備を導入し電力コストを2割程度削減する効果を得た事例もある。しかしこれは接触型の軸受けであるので、摩擦による物理的な損傷でメンテナンスの手間やコストが大きくユーザーからはこれらを低減する要望が出ている。今回開発した次世代フライホイール蓄電システムであれば、使用電力低減とともにメンテナンスコスト削減が実現できるため、ニーズに合致する」(長嶋氏)

 今回の実証実験の結果を踏まえた上で、鉄道向けの実証実験なども2016年度以降に進めていくとし「数年後には実用化できるようにしたい」と長嶋氏は語っている。

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