小水力発電で村おこし、農業用水路が新たな価値を生む:エネルギー列島2015年版(21)岐阜(3/3 ページ)
面積の8割以上を森林が占める岐阜県には水力とバイオマス資源が豊富にある。過疎に悩む農村では農業用水路に小規模な水力発電機を設置して電力の自給自足が始まった。ダムを利用した小水力発電も相次いで運転を開始する一方、都市部では地域ぐるみのバイオマス発電が広がっていく。
バイオマスは木質と下水を燃料に
岐阜県は面積に占める森林の比率が81%に達する。高知県の84%に次いで全国で第2位だ。森林で発生する間伐材などの未利用木材が大量に残っていて、木質バイオマス発電を実施するには適した環境にある。木曽山脈にも近い東部の瑞浪市(みずなみし)で2014年12月に新しい木質バイオマス発電所が運転を開始した(図6)。
地元の染色メーカーが中心になって設立した「岐阜バイオマスパワー」が発電所を運営している。発電能力は6250kWで、年間の発電量は1万1000世帯分に相当する規模になる。瑞浪市の総世帯数(1万5000世帯)の7割以上をカバーすることができる。総事業費の28億円のうち14億5000万円を岐阜県の森林整備加速化・林業再生基金から調達した。
燃料に使用する木質バイオマスは年間に9万トンを見込んでいる。3分の2は森林の間伐などで発生する未利用の木材、残りの3分の1は製材後の端材などを利用する。このバイオマス発電所を建設するにあたって、地域の生産業者を加えた協議会を設立して燃料を安定供給できる体制を構築した(図7)。発電所の近くにはチップの製造施設も同時に完成して、燃料の調達から発電までの一貫体制が整っている。
未利用のバイオマスを使った発電プロジェクトは平野部でも始まった。西部の大垣市では浄化センターに燃料電池を導入して、下水の処理工程で発生するバイオガスを活用して発電事業に乗り出す(図8)。1台あたり105kWの発電能力がある燃料電池3台を導入する計画で、運転開始は2017年4月を予定している。
これまで下水処理で発生するバイオガス(消化ガス)は施設内を加温するためのボイラーの燃料として利用してきたが、それでも余るために焼却処分が必要だった。新たに燃料電池を導入して全量を発電用の燃料に回しても、発電時の排熱を使って従来と同様に施設内を加温することができる。
3台の燃料電池による発電量は年間に250万kWhを想定している。発電した電力は固定価格買取制度で売電して年間に9600万円の収入を生み出す。総事業費は4億9800万円かかるが、燃料費は不要なため早期に投資を回収できる見通しだ。焼却処分していたバイオガスから電力を作ることでCO2排出量の削減にも貢献する。同様の取り組みが他の地域の下水処理場にも広がる可能性は大きい。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −北陸・中部編 Part2−」をダウンロード
2016年版(21)岐阜:「全国一の水流を生かして小水力発電、山奥の古い農業用水路も電力源に」
2014年版(21)岐阜:「太陽光と小水力で農業を変える、ソーラーシェアリングが始まる」
2013年版(21)岐阜:「清流の国に広がる小水力発電、山沿いと平地でも落差を生かす」
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