木質バイオマス発電所を自治体が誘致、港の近くで1万1000世帯分の電力:自然エネルギー
エネルギー産業の拠点づくりを進める新潟市は、大型の港に併設する工業団地に木質バイオマス発電所を誘致した。福島県で運転中の発電所と同様の設備を建設する計画だ。燃料は新潟県内の森林組合から未利用木材を調達するほか、港の機能を生かして海外のパームヤシ殻も輸入する。
木質バイオマス発電所の用地は日本海側で最大の物流拠点になっている「新潟東港」に隣接する工業団地の中にある(図1)。再生可能エネルギーの導入を推進する新潟市が誘致したもので、1万6000平方メートルの敷地に建設する。
誘致に応じた発電事業者は、福島県で林業を運営するノーリンのグループ会社「バイオパワーステーション新潟」である。ノーリンは福島県の会津若松市に「グリーン発電会津」を設立して2012年7月に木質バイオマス発電事業を開始した(図2)。固定価格買取制度で初めて木質バイオマスの認定を受けた発電設備として知られている。新潟市の発電所にも同様の設備を住友重機械工業から導入してノウハウを生かす。
発電能力は5.75MW(メガワット)で、発電所内で消費する分を除いた4.95MWを東北電力に売電する。すでに4月から建設工事に入っていて、2016年6月に運転を開始する予定だ。1日24時間の連続運転で年間に340日の稼働を想定している。年間の発電量は4000万kWh(キロワット時)になり、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万1000世帯分に相当する。売電収入は年間に約13億円を見込んでいる。
燃料は地域の森林で発生する間伐材などの未利用木材のほか、製材後の端材や建築廃材を利用する方針だ。新潟県森林組合連合会がバイオパワーステーション新潟と協定を結んで、地域の森林組合から未利用木材を供給する。新潟県内でも各地域で大量の間伐材が森林に残っていて処理方法が課題になっている(図3)。
ただし運転を開始する当初は県内の木質バイオマスだけでは足りないため、東南アジアからパームヤシ柄を輸入して燃料に加える。発電所を建設する工業団地は新潟東港から至近距離にあり、海外から燃料を輸入しやすい。陸上交通網も整っていて燃料の輸送に適した立地だ(図4)。
発電所の総事業費は33億円かかる見通しで、2つの銀行から協調融資を受けることが決まっている。福島県の東邦銀行が22億円、新潟県の第四銀行が10億円を融資する。自治体と森林組合・金融機関を加えて、地域ぐるみで木質バイオマス発電事業を推進していく。
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