再生可能エネルギーの制度改革へ、問題山積のまま具体策は見えず:自然エネルギー
政府は2030年までに再生可能エネルギーの比率を22〜24%に引き上げるため、新たに委員会を設置して制度改革の検討に入った。固定価格買取制度を大幅に見直し、全国レベルの広域連系を推進して導入量を増やす方針だが、具体的な施策や実行スケジュールのめどは立っていない。
九州電力が「川内原子力発電所」の1号機を通常の営業運転状態に移行させた翌日の9月11日、経済産業省は「再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会」の第1回会合を開いた。
7月に公表した2030年のエネルギーミックス(電源構成)では、再生可能エネルギーの比率を原子力よりも大きい22〜24%程度に引き上げる目標を掲げたが(図1)、具体的な拡大策やさまざまな課題の解決策が残されたままになっている。もっと早い段階から対策を実行すべき課題も多く、政府の対応の遅さが改めて浮き彫りになった。
現在のところ委員会は具体的な時期を定めないまま3つの観点で検討を進めていく。第1にエネルギーミックスの実現方法、第2に国民負担を抑制するためのコスト効率改善、そして第3に電力システム改革を通じた導入拡大の仕組みづくりだ(図2)。
いずれの観点でも基本になるのは、太陽光からバイオマスまで5種類の再生可能エネルギーの拡大方法である。これまでエネルギーミックスの目標値は年間の発電電力量で示してきたが、委員会では設備容量もふまえて対策を検討する。2030年までに新たに導入する必要がある設備容量の規模は、固定価格買取制度の3年間で導入した容量と比べて格段に大きいことが明らかになっている(図3)。
今後の導入量は太陽光で4000万kW(キロワット)以上にのぼり、風力は800万kW、中小水力は100万kW以上、地熱も100万kW前後が必要になる。バイオマスは350〜470万kWの新規導入が必要で、川内原子力発電所の1号機(89万kW)と比べて4〜5倍の規模で増やさなくてはならない。
そのためには発電事業者の導入意欲を高める必要があるが、一方で第2の検討課題に挙がっている固定価格買取制度の賦課金を抑制しなくてはならない(図4)。買取価格の見直しを含めて制度の抜本的な修正が急務だ。ただし再生可能エネルギーの導入量と買取価格のバランスをとることは至難の業で、政府内でも確実な見通しは立てられていない。
委員会では第2回の会合で固定価格買取制度の手続きの改善方法について、続く第3回で買取価格の決定方式やコスト負担について検討する予定だ。遅くとも年末までに具体策の原案をまとめて、2016年度の運用に間に合わせることが求められる。
さらに再生可能エネルギーの導入量を拡大するうえで重要な送配電ネットワークの接続可能量についても早急に解決策を実行する必要がある。委員会では第4回の会合で地域を越えた広域レベルの連系拡大などを検討していく(図5)。2016年4月に小売の全面自由化が始まると、事業者間の電力取引の拡大が見込まれることから、再生可能エネルギーによる電力の流通量を増やせる可能性がある。
委員会の検討課題には早期に対策を実行しなくてはならない項目が数多く含まれている。具体策の洗い出しと実行スケジュールのめどを早く立てて、すぐにでも国を挙げて取り組まなければ、2030年には間に合わなくなる。残された時間は15年しかない。
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