究極の石炭火力発電「IGFC」に、ガスのクリーンナップ技術を開発:蓄電・発電機器
燃料費の安い石炭火力で最高の発電効率を発揮する方式が「IGFC」(石炭ガス化燃料電池複合発電)である。2025年に実用化する国の目標に向けて新たな技術開発プロジェクトが動き出した。IGFCで課題になる石炭ガスのクリーンナップ技術を開発して燃料電池の性能劣化を防ぐ試みだ。
日本の石炭火力発電の技術は世界でも最高の水準にある。国を挙げて取り組む技術開発プロジェクトの中で、最終的に目指すのは石炭火力と燃料電池の融合である。「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC:Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycle)」は発電効率が55%に達して、CO2(二酸化炭素)の排出量は最新の石炭火力発電と比べて30%も少なくなる(図1)。
究極の石炭火力発電と呼べる方式だが、実用化までに解決しなくてはならない技術的な課題がいくつか残っている。その1つが石炭ガスのクリーンナップ技術だ。IGFCは石炭からガスを発生させて、そのガスから水素を抽出して燃料電池で発電する。ところが石炭で作ったガスの中には、燃料電池の性能を劣化させる「被毒成分」が含まれている(図2)。
被毒成分になる可能性がある物質は、塩素やケイ素など8種類以上に及ぶ。こうした被毒成分を除去するクリーンナップ技術の開発プロジェクトが始まる。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2017年度までの3年間に7億円を投入して、開発はJ-POWER(電源開発)が担当することになった。
このプロジェクトでJ-POWERは石炭をガス化した成分を使って燃料電池の被毒試験を実施する。試験を通じてガスの被毒成分に対する燃料電池の耐性を評価しながら、被毒成分を許容レベルまで除去できるクリーンナップシステムを開発する計画だ。
J-POWERは2002年からNEDOと共同で石炭ガス化発電に取り組んできた。現在は中国電力と推進する「大崎クールジェン」の実証プロジェクトで石炭ガス化発電の技術を開発中だ。大崎クールジェンは広島県にある中国電力の「大崎発電所」の構内に実証用の発電設備を建設する(図3)。
大崎クールジェンの実証プロジェクトは3段階に分かれていて、最後の第3段階でIGFCの実用化を目指す。国の目標に合わせて2025年をめどに運転を開始する見通しで、日本で初めて商用レベルのIGFCになる可能性が大きい。大崎クールジェンで実証するIGFCでは3つの開発課題が挙がっていて、石炭ガスのクリーンナップ技術も含まれている(図4)。2017年度までにシステムを開発できれば、IGFCの実用化に弾みがつく。
関連記事
- 進化を続ける火力発電、燃料電池を内蔵して発電効率60%超に
2030年代に向けて火力発電の仕組みが大きく変わる。国を挙げて取り組む次世代の火力発電は燃料電池を内蔵する複合発電(コンバインドサイクル)がガス・石炭ともに主流になっていく。2030年代には発電効率が60%を超える見通しで、CO2排出量も現在と比べて2〜3割は少なくなる。 - 次世代の発電効率は3割アップ、燃料費とCO2を減らす
15年後の2030年になっても、日本の電力の半分以上は火力発電に依存する。燃料費とCO2排出量を削減するためには、発電効率を引き上げるしかない。日本が世界に誇る石炭火力とLNG火力の最新技術を進化させれば、2030年までに現在の発電効率を3割以上も高めることが可能だ。 - 世界最高水準の石炭ガス化プロジェクト、熱効率を46%へ高める
日本が世界に誇る石炭火力発電の進化が続いている。NEDOとJ-POWERが共同で取り組んできた「石炭ガス化複合発電」では、現在の石炭火力発電で最高レベルの熱効率46%を達成できることを確認した。さらにCO2分離・回収技術や燃料電池を組み合わせた実証プロジェクトも始まっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.