自由化に向け加速する顧客争奪戦、人材の“選択と集中”を支援するベンチャーの狙い:電力供給サービス(2/2 ページ)
2016年4月から始める電力の小売全面自由化に向け、対応に迫られる電力事業者を対象としたサービスが続々と登場している。クラウドソーシングという人材事業を手掛けるベンチャー企業のクラウドワークスは、2015年5月から新事業として電力事業者向けの業務委託サービスを開始した。同社にその内容と狙いについて聞いた。
業務効率の改善から、発電設備の適地探しまで
クラウドワークスがBPOの主な注力領域としているのは電力会社への接続申請、需給管理、補助金申請などの関連業務の効率改善だ。関根氏によると、例えば補助金申請などの作業は営業担当の社員が兼務していたり、派遣社員に任せる場合でもそのための教育にコストが経営の負担になっていたりする場合が多いという。BPOではこうした業務の内容を専門知識を持つクラウドワークスの担当者が社内に常駐して整理を行う。業務効率の改善や、事業者はコア業務に人材リソースを割きやすくなるといったメリットを提供する仕組みだ(図2)。
「需給管理については代行サービスを提供している他の企業も多い。しかし、全てを外部委託にしたくないという企業も多い。その中で自社で人材を集めたり運営するリソースがないという事業者にアプローチを進めている」(関根氏)。
現在クラウドワークスのBPOは電力関連事業者や政府の補助金関連事業に従事していた複数の社員を中心に展開しており、関根氏は「電力事業に関する知識やノウハウを活用して、関連する業務の整理分解や体系化を素早く行える点が強み」と語る。2015年5月のBPO開始以降、既に複数の案件受注しており、中でも大手の事業者からは2016年4月からの自由化に合わせた業務の切り替えや改善をサポートして欲しいという要望が多いという。
クライアント企業との契約は特定業務の改善などのプロジェクト単位となっており、常駐する担当者の人数やプロジェクトの規模によって金額が決まる仕組みだ。先述した通りクラウドワークスはクラウドソーシングを事業の中心に据えている。BPOで業務内容や組織体制の整理を行い、最終的にクラウドソーシングを活用するかについては、今のところ状況に応じて提案する形になっている。
この他にも、自由化に伴い新たに電力事業を手掛ける事業者などからは、Web製作や事業の立ち上げに向けたマーケティング業務なども引き受けている。具体的には電力価格の比較情報サイトの構築やそこに掲載する記事コンテンツの製作、さらに中には太陽光発電設備を設置できる場所を探してほしいという依頼もあったという。
こうした依頼内容の場合はクラウドソーシングを活用する場合もある。特にWeb製作やコンテンツ製作はクラウドワークスが以前からクラウドソーシングの活用分野として得意としている分野だ。
BPOの活用は進むか?
一般的に企業側がBPOを活用するメリットは、収益源に直結するコア業務にリソースを集中させたり、固定費を削減できたりする点にある。しかし日本はこうしたBPOの活用が“進んでいる国”とはいえないだろう。
こうした状況でクラウドワークスが新事業としてBPOに注力するのは、企業が外部リソースを活用し始めることで、同社の基盤事業であるクラウドソーシングの利用を促進していく狙いもある。同社はBPO事業を電力以外の領域にも広げていく方針で、まず第1歩として今後大きな転機を迎える電力市場にフォーカスしている。
関根氏は「日本でBPOのような外部活用が進んでいないのは事実。やはり外に出してしまうのは不安という気持ちがあり、心理的ハードルが大きいのではないかと思う。これまでクラウドワークスはメディアやネット系など、業務が細分化されており外部委託をしやすい状況にある企業とのやりとりが多かった。しかし今後、電力や製造業といった日本の重厚長大産業に対して、どうしたら業務を外部委託することの心理的なハードルを下げてもらえるのかを考えた場合、BPOのようにまずは業務の切り分けをして整理してあげるのことが1つの方法になるのではないかと考えている」と述べている。
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