地熱資源が豊富な「カルデラ」の村で、発電に向けた仮噴気試験が始まる:自然エネルギー
再生可能エネルギーを利用する発電設備の中でも、運転開始までに最も長い開発期間を必要とするのが地熱だ。調査段階から地下深くまで井戸を掘削して蒸気の温度や噴出量を調べる必要がある。出光興産など3社が北海道の西部に広がる火山地帯で仮噴気試験を開始した。
地熱発電の候補地は札幌市から西へ40キロメートルほど離れた赤井川村(あかいがわむら)にある(図1)。この村は四方を山で囲まれた「カルデラ」の地形が特徴で、山の1つである「阿女鱒岳(あめますだけ)」で地熱発電の開発プロジェクトが進んでいる。
阿女鱒岳の周辺に地熱資源が豊富に存在することは、過去の調査でも確認できている。再生可能エネルギーの開発を推進する石油大手の出光興産を中心に、国際石油開発帝石と三井石油開発を加えた3社の連合体が発電事業に向けて2011年から地表調査に着手した。地熱発電所を建設するまでには5段階のステップが必要で、現在は第2段階の掘削調査を実施中だ(図2)。
掘削調査の後半にあたる仮噴気試験を10月1日に開始した(図3)。すでに2013年の時点で調査用の構造試錘井(こうぞうしすいせい)を地下2000メートルの深さまで掘削してある。この井戸から噴出する蒸気の量や温度、噴出する流体の成分を分析する。
仮噴気試験のほかにも近隣の温泉のモニタリング調査を実施したうえで、2017年度には次の第3段階の探査に入る計画だ。探査のフェーズでは構造試錘井よりも口径の大きい調査井(ちょうさせい)を掘削した後に、本格的な噴出試験を通じて資源量を評価する必要がある。この探査の評価結果をもとに発電事業の可否を判断する。
通常の地熱発電では探査に約3年かかるため、事業化の判断を下す時期は2020年くらいになりそうだ。さらに発電規模が10MW(メガワット)以上の場合には環境影響評価(アセスメント)が義務づけられる。阿女鱒岳で地熱発電所が運転を開始するのは2020年代の半ばの見込みである。
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