首位を奪還パナソニック、太陽光で記録を連発:太陽光
シリコンを利用した一般向けの太陽電池。いまここで激しい性能競争が起こっている。22%を超える高い水準での太陽電池モジュールの変換効率だ。太陽電池モジュールで達成した記録は、製品により近い数字であり、一般消費者や導入企業に与える影響も大きい。
シリコンを利用した太陽電池モジュール(パネル)の変換効率が22.5%に達した――2015年10月6日にロンドンから飛び込んできたニュースだ。2015年10月2日にはテスラモーターズのイーロン・マスク氏が経営に参画する米SolarCityが、22.04%という太陽電池モジュール変換効率の記録を発表したばかり。わずか4日でパナソニックが記録を更新した形である。
ドイツPanasonic Electric Works Europeの発表は2つある。1つは太陽電池の変換効率に関するもの、もう1つは欧州に投入する太陽電池の新製品に関するものだ。
まずは変換効率の記録だ。太陽電池モジュールの変換効率において22.5%を達成した*1)。これは非集光型のシリコン太陽電池モジュールの世界記録であるという。出力は270W。量産技術を適用して試作した新開発のHIT太陽電池セルを72枚組み合わせた。
太陽電池モジュールの市場の現状は次のようなものだ。住宅の屋根や地上に設置する太陽電池モジュール技術のうち、群を抜いて市場規模が大きいのが、多結晶太陽電池と単結晶太陽電池。これを薄膜シリコン太陽電池や化合物半導体を用いたCdTe太陽電池やCIS(CIGS)太陽電池が追っている。いずれも年産1GW以上の生産能力をもつ。
HIT太陽電池は、内層の単結晶シリコンと表面層の薄膜シリコン(アモルファスシリコン)を組み合わせた構造を採る。量産品としては最も変換効率が高い太陽電池であり、わずかに遅れて単結晶太陽電池が追う。変換効率の「第2グループ」はCdTe太陽電池とCIS太陽電池、多結晶シリコン太陽電池だ。セル変換効率の世界記録ではいずれも20%を超える。
*1) 産業技術総合研究所(AIST)が測定した。
出力330WのHIT太陽電池を投入
新製品「HIT N330(VBHN330SJ47)」は、96セルを用いた出力330Wの太陽電池モジュール(図1)*2)。モジュール効率は19.7%。一般的な多結晶シリコン太陽電池製品(出力260W)と比較して最大出力が約27%高いという。新製品を15枚設置したときの出力は4.95kWとなり、260W品の3.90kWよりも1kW多くなる計算だ。
発表資料において、Panasonic Eco Solutions EuropeのシニアビジエネスデベロパであるDaniel Roca氏は次のように述べている。「欧州の自家消費市場*3)においては、変換効率が高く、設置枚数が少なくても従来と同等の出力が得られる(N330の)性質は理想的だ」。同氏は、メリットをもう1つ挙げた。設置枚数が減るために、施工を担当する企業が施工コスト(balance of systems)を抑えることが可能になる。
「HIT N330では、変換効率24.3%の太陽電池セルを用いる」(パナソニック)。同社は2014年4月に太陽電池セルで25.6%という世界記録を達成している。太陽電池モジュール製品の効率向上にはまだ余裕がありそうだ。
同社は、HIT N330を2016年3月、英国と欧州諸国向けに投入する。「日本は太陽電池市場として活況を呈しているものの、今回のN330は欧州向けであり、日本向けに投入する予定はない」(同社)。
*2) 寸法は1053mm×1590mm、重量は19kg。HIT N330と同時に、外形が同じで出力が325WのHIT N325(VBHN325SJ47)も製品化する。
*3) 欧州各国のうち、市場が成熟している国では、固定価格買取制度(FIT)を利用して売電するよりも、発電した電力を住宅内で利用する方が、トータルの電気料金を低く抑えることができる(FITは役目を終えつつある)。
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