冬の電力は北海道が予備率14%で安定、関西3.3%、九州は4.7%を予測:電力供給サービス
政府の委員会による今冬の需給予測がまとまった。前年度に16%以上の予備率を確保できた北海道は今年度も14%以上を維持できる見通しだ。過去4年間に危険水準の予備率3.0%を予測し続けた関西と九州は少しだけ上昇させたが、最近の実績を考えれば十分な余裕が見込める。
もはや夏と冬の需給予測が不要になるほどに、全国各地の電力は年間を通して安定してきた。それでも電力会社が国に提出した冬の需給見通しによると、需要に対する供給力の余裕を示す「予備率」は関西で危険水準の3%に近づく予測だ。1月は4.3%、2月になると3.3%まで低下する(図1)。
次いで予備率が低くなるのは九州で、2月に4.7%まで下がる見通しだ。九州電力は関西電力とともに過去4年間にわたって夏と冬の予備率を3%で予測してきた。9月に「川内原子力発電所」の1号機が再稼働したことから、初めて3%を上回る予備率を提示した。一方の関西電力は原子力発電所が再稼働していない状態ながら予備率を引き上げた。
それも当然で、前回の冬の実績を見れば、関西電力と九州電力が需要を過大に見積もっていたことは明らかだ。両地域ともに最大需要の見通しと実績に50万kW(キロワット)も開きがあった。予備率は関西が5.3%、九州は8.3%の十分な余裕をもって電力を供給することができた(図2)。原子力発電所の運転停止は影響を及ぼしていない。
ほかの地域を見ると今年の冬は東京で1月に予備率が4.9%まで下がる予測だが、これも心配ない。同様に需要を多めに見込んでいるからだ。前回の冬の最大需要が4667万kWだったのに対して、今冬は4840万kWを想定している。10社の中で前年度の実績よりも低い予測を出したのは四国電力だけである。残る9社は高めの需要をもとに予備率を計算している。
そうした前提でも北海道は14%以上の予備率を確保できて、冬の電力に不安な要素は見あたらない。2年前の2013年度には電力不足のおそれから6%以上の節電目標を設定していたことを考えると大きな違いだ。北海道電力が供給力を増強した効果もあるが、何といっても需要の減少が著しい。
冬の最大需要はピークだった2010年度が579万kWhだったのに対して、2013年度は540万kW、2014年度は534万kWへ減り続けている。今冬は543万kWを予測しているが、よほど厳しい寒さにならない限り、家庭や企業の節電対策でさらに減少する可能性が大きい。北海道の冬の電力不足は過去の話になりつつある。
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