火力発電所を石油から石炭へ、環境省の反対意見を受けても前進:電力供給サービス
中部電力は愛知県の「武豊火力発電所」の設備を全面的に更新する計画だ。運転開始から40年以上を経過した石油火力発電設備4基から最新の石炭火力1基へ移行する。建設に先立つ環境影響評価の最初の段階で環境大臣から「是認できない」との意見が出たが、予定通りに手続きを進める。
「武豊火力発電所」は中部電力の11カ所ある火力発電所の中で4番目に古く、1号機が1966年、2〜4号機が1972年に運転を開始した(図1)。すでに1号機は廃止済みで、2〜4号機も2015年度内に廃止することにしている。4基とも燃料に石油を使っていたが、代わりにコストの低い石炭火力1基を建設して2022年3月から営業運転に入る予定だ。
新設する石炭火力発電設備は出力が107万kW(キロワット)で、国内でも最大級の規模になる。建設工事の前に環境影響評価の手続きを進める必要があり、現在は第2段階の「方法書」を作成して10月15日に関係各所へ送付したところだ(図2)。
これに先立つ第1段階の「配慮書」を6月に提出済みだが、環境大臣が「現段階では計画を是認できない」との厳しい意見を出して波紋を呼んだ。武豊火力発電所に新設する設備は最新技術の「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」を採用して、発電効率は石炭火力で最高水準の46%に達する。排ガスに含まれる有害物質を除去する装置も備えている(図3)。
ところが環境省が問題視したのは武豊火力発電所の計画そのものではなく、火力発電に伴うCO2(二酸化炭素)の排出量を削減する取り組みを電力業界が構造的に進めていない点にあった。石炭火力では最新の技術を採用しても、LNG(液化天然ガス)を燃料に使った火力発電と比べるとCO2排出量が多くなる。その対策が十分にとられていないことにも環境省は懸念を示した。
電力会社10社を中心とする発電事業者は9月30日に、火力発電によるCO2排出量を2020年度までに年間で最大700万トン削減する目標を発表した。これに対して環境省は正式なコメントを出しておらず、武豊火力発電所の計画を容認するかどうかは現在のところ不明だ。
中部電力は環境影響評価の方法書を10月16日から公開して一般からも意見を集める。続いて立地自治体の愛知県知事、さらに環境大臣と経済産業大臣が意見を提出して次のステップへ進む。はたして環境大臣がどのような意見を出すかに注目が集まる。中部電力は2年半後の2018年5月に建設工事を始める計画で、それまでに4段階の手続きを終える必要がある。
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