北海道の太陽光で発電効率20%超に挑む、両面発電×追尾式で実証:自然エネルギー(2/2 ページ)
北海道では年間の日射量が全国平均を上回る一方で冬の降雪量も多い。雪国の再生可能エネルギーを拡大する取り組みとして、太陽光発電の効率を通常の1.5倍にあたる20%以上に高める実証事業が始まる。裏面でも発電できる太陽電池を採用して、太陽の動きを追いかける追尾式を併用する。
両面発電のメガソーラーが旭川で稼働中
PVG Solutionsは旭川市で稼働中の「旭川北都ソーラー発電所」に両面発電の太陽電池を納入した実績がある。3万5000平方メートルの敷地に5320枚の両面発電パネルを設置して、1250kW(キロワット)の発電能力がある。パネルの表面に雪が積もりにくいように、設置角度は40度になっている(図2)。
2013年9月に運転を開始して、すでに3年目に入った。2014年8月〜2015年7月の実績を見ると、年間の発電量は169万kWh(キロワット時)で、片面発電の場合と比べて1.2倍以上を記録している(図3)。設備利用率は標準を上回る15.4%に達する。
PVG Solutionsによると、冬の積雪時には地面に積もった雪の反射光で裏面の発電が先に起こる。さらに発電に伴う熱でパネル表面の雪が滑り落ちやすくなる効果を発揮する。雪が降る冬には春先と比べて発電量が4分の1程度まで減るが、それでも両面で発電することによって片面の発電量から40%以上も増える。
一方の追尾式は福島県の農園で営農型の太陽光発電に使われている。いわき市の「とまとランドいわき」に75基の発電システムを設置して2014年9月から稼働中だ(図4)。発電能力を合計すると412kWになり、年間の発電量は71万kWhを見込んでいる。予定通りに発電できると、設備利用率は19.6%に達する。標準の13%と比べて1.5倍の効率だ。
さらに両面発電が加われば、設備利用率が20%を超える可能性は十分にある。北海道では夏よりも冬の電力需要が大きくなることから、再生可能エネルギーによる自給率を高めるには冬の発電量を可能な限り増やす必要がある。この実証事業は北海道庁の「平成27年度 環境・エネルギープロジェクト形成促進事業」と札幌市の「札幌型環境・エネルギー技術開発支援事業」の補助金で支援していく。
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