省エネを革新する次世代素材「CFRP」、リサイクル課題に挑むベンチャー登場:省エネ機器(2/2 ページ)
鉄に比べ4分の1の軽さでありながら、10倍以上の強度を持つ炭素繊維強化樹脂。次世代自動車や風車などのエネルギー効率の向上に貢献する素材として利用が進み始めたが、リサイクルに課題が残る。「TOKYOイノベーションリーダーズサミット」で、ベンチャー企業のカーボンファイバーリサイクル工業は同社が展開するCFRPのリサイクル技術をアピールした。
“自己再生型”の省エネなリサイクルシステムを開発
カーボンファイバーリサイクル工業らが開発したリサイクルシステムは、廃材となったCFRPを高温で熱することで、樹脂成分のみを除去するというのが基本的な仕組みだ。だがその加熱工程に大きな特徴がある。
加熱工程は2段階に分かれており、まず1段階目となる炭化炉でCFRPの樹脂成分のみを炭化させる。この際に樹脂成分がガス化したものを燃料として加熱に再利用する。第2段階ではガス化できずに残留した炭素成分を、焼成炉で炭化炉の排熱を利用しながらゆっくりと燃焼していく。このようにCFRPの樹脂を“燃料”として利用し、さらに効率良く排熱も活用することで省エネルギーな自己再生型のリサイクルシステムとなっているのが特徴だ(図3)。こうした加熱工程には、岐阜県の伝統産業である瓦製造で培った焼成技術が生かされているという。
CFRPのリサイクル技術を開発する上で、障壁となっていたのがリサイクルに掛かるエネルギーコストの課題だ。リサイクルといってもエネルギーコストがCFRPの製造より高くなってしまっては意味がない。
カーボンファイバーリサイクル工業のシステムはこうした課題をクリアし、さらに加熱工程を2段階に分けることで省エネルギー化に加え、取り出せる炭素繊維の品質を高めることにも寄与しているという。またシステムに連続的にCFRPを送り込むことも可能で、リサイクル効率も高めた。
カーボンファイバーリサイクル工業はCFRPのリサイクル業務の拡大に向け、現在岐阜県内への新工場への移転計画を進めているという(図4)。新工場は2015年11月から稼働する計画で、「今後少しずつ稼働率を上げていき、将来的にCFRPを年間1000トンほどリサイクルできるようにしていきたい」(ブース担当者)としている。
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