歴史のまちに小水力と太陽光発電、自然のエネルギーから地域を再生:エネルギー列島2015年版(29)奈良(3/3 ページ)
歴史と自然に彩られた奈良県の農村で、再生可能エネルギーを利用した村おこしの取り組みが進んでいる。100年以上も前に造られた小水力発電所を住民が中心になって復活させる計画だ。古墳の近くに広がる池の水面や、地域を流れる農業用水路の上には太陽光パネルが並んでいる。
木質バイオマス発電所も建設中
吉野地方の西側に広がる五條市の住宅地では、隣接する土地に2つのメガソーラーが稼働している。1つは2014年12月に運転を開始した「DREAM Solar なつみ台II」で、17万平方メートルの用地に2万8000枚の太陽光パネルを設置した(図6)。発電能力は6MWあり、現時点では奈良県で最大のメガソーラーだ。
もう1つは同年4月に稼働した「DREAM Solar なつみ台I」(発電能力2MW)で、2カ所を合わせると年間に800万kWhの電力を供給することができる。一般家庭で2200世帯分の使用量に匹敵する。どちらも大和ハウスグループが建設した。建設費は合計で24億円にのぼり、年間の売電収入は3億円を超える見通しだ。
奈良県の再生可能エネルギーは太陽光と水力を中心に導入量が増えてきた(図7)。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は太陽光が全国で36位、中小水力は18位に入っている。さらにバイオマス発電所を建設するプロジェクトも動き出した。
スギの生産地としても有名な吉野地方では、発電能力6.5MWの木質バイオマス発電所が2016年3月に稼働する予定だ(図8)。地域の森林組合が間伐材などを供給して、燃料はすべて木質バイオマスを利用する。年間に7万トン以上の木材を使って4300万kWhの電力を供給することができる。一般家庭で1万2000世帯分の使用量に匹敵する電力を生み出す。
バイオマス発電用の木材を安定的に供給するために、県の森林組合連合会が「奈良県木質バイオマス発電安定供給協議会」を設立して支援する。燃料になる木材の基準作成から買取価格の決定、調達量の調整までを協議会が担う。さらに近隣の自治体も燃料の供給に協力する。
吉野発電所が立地する大淀町から北へ20キロメートルほど離れた桜井市では、発電所の運転開始に先立って間伐材を買い取る体制を整えた。森林組合が買い取った木材をチップ工場に供給して、燃料の木質チップを製造する。森林の所有者が処分に困っている未利用の木材を効率的に引き取るシステムになっている(図9)。県内の林業と自治体が連携しながらエネルギーの地産地消を推進していく。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −関西編 Part2−」をダウンロード
2016年版(29)奈良:「バイオマス発電で林業に活力を、山深い村には小水力発電が復活」
2014年版(29)奈良:「内陸県に広がる太陽光とバイオマス、導入目標を60MW上乗せ」
2013年版(29)奈良:「北の大和盆地で小水力発電、南の吉野山地にメガソーラー」
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