人工の島にメガソーラー完成、琵琶湖から2600世帯分の電力:自然エネルギー
琵琶湖の中に1つだけある人工の島で大規模なメガソーラーが運転を開始した。発電能力は8.5MWに達して、滋賀県で最大の太陽光発電所になった。エネルギーの地産地消を推進する滋賀県が民間の事業者に県有地を貸し出して実施したプロジェクトで、県には年間に2800万円の納付金が入る。
滋賀県の琵琶湖に浮かぶ「矢橋帰帆島(やばせ・きはんとう)」で県内最大のメガソーラーが11月1日に運転を開始した(図1)。県が所有する9万6000平方メートルの用地に合計3万3000枚の太陽光パネルを設置したもので、発電能力は8.5MW(メガワット)にのぼる。
滋賀県の公募で選ばれた京セラTCLソーラーが用地を借り受けて建設した。年間の発電量は930万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して2600世帯分に相当する。
発電した電力は全量を関西電力に売電する計画だ。滋賀県は土地の賃貸料と固定資産税を合わせて年間に2800万円(税込み)の納付金を20年間にわたって得ることができる。
発電所を建設した矢橋帰帆島は琵琶湖で唯一の人工の島で、湖の南端の東側にある(図2)。昭和の高度成長期に琵琶湖の周辺地域で水の使用量が増大した影響により湖の水質が悪化して、赤潮が発生するなどの問題が生じた。周辺地域の下水道を浄化する処理設備の建設用地として、1982年に湖を埋め立てて造成したのが矢橋帰帆島である。
現在は県内最大の下水処理量がある「湖南中部浄化センター」が稼働しているほか、島の半分以上は県営の公園になっていて野球場やグラウンドが造られている。その中でゴルフ場があった場所をメガソーラーの建設用地に転換した(図3)。
滋賀県は2030年までに県内の電力供給量の25%を電力会社に依存しない分散型の電源に置き換える目標を掲げている。再生可能エネルギーで10%、天然ガスと燃料電池の組み合わせで15%を供給できるようにする計画だ。平野部が多い滋賀県では再生可能エネルギーの大半を太陽光発電で実施する必要があり、県有地を活用してメガソーラーを増やしている。
県内最大の矢橋帰帆島のメガソーラーはエネルギーの地産地消を推進するシンボルに位置づける方針で、全体を一望できる見晴台も併設して環境教育に利用する。島内には太陽光で発電した電力を利用した街灯や時計のほか、災害対策で非常用の電源も備えている。
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