ニュース
液体金属を“流す”だけで電力に、発電装置の小型化につながる新発見(2/2 ページ)
東北大学らの研究グループが液体金属中の電子の自転運動を利用した新しい発電法を発見した。直径数百ミクロンの細管に液体金属を流すことで、100nV(ナノボルト)の電気信号が得られることが分かったという。
液体金属の渦運動で100ナノボルトの電気信号
研究グループは上記の理論を基に、直径400ミクロン(1000分の1ミリメートル)の石英細管に液体金属であるガリウム合金を流す実験を行った。その結果、100ナノボルト(1000万分の1ボルト)の電気信号が得られることがわかったという(図3)。
実験では渦運動を駆動するために時刻0から10秒までの間圧力を加えている。圧力を加えている間のみ電圧が生じる。加える圧力(0.1から0.6メガパスカル)を大きくする程、取り出せる電圧も大きくなった(図4)。研究グループはこうした成果について「電子のスピンが液体金属の渦運動と量子力学的に相互作用することを世界で初めて証明した」としている。
従来の流体発電では、水流でタービンを回転させる水力発電や、磁石を使った磁気流体発電のように、タービンや磁石といった外部装置が不可欠だった。研究グループは今回発見した手法により「電子の自転運動と流体渦運動との相互作用を利用するので外部装置が不要となり、原理的には発電装置の超小型化が可能」としている。
また、実験で得られた電気信号は100ナノボルト非常に微弱なものだが、研究グループは「微弱な電力で駆動するナノロボットの電源装置への応用が期待される。また得られる電気信号の強度が流体の速度に応じて変化することを利用して、ミクロンスケールの微小な領域における流体の速度を電気で観測する流体速度計の実現も期待できる」としている。
関連記事
- 熱エネルギーを永続保存できる蓄熱素材を発見、損失ゼロの太陽熱発電実現に期待
東京大学大学院理学系研究科の大越慎一教授と筑波大学数理物質系の所裕子准教授らの研究グループは、永続的に熱エネルギーを保存できるセラミックス「蓄熱セラミックス(heat storage ceramics)」という新概念の物質を発見した。太陽熱発電システムや廃熱エネルギーの再生利用素材としての活用が期待される。 - 水からプラスチックを作る、「人工光合成」で化石燃料不要の化学品製造実現へ
NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合は、太陽エネルギーを利用した光触媒による水からの水素製造で、世界最高レベルの太陽エネルギー変換効率である2%を達成した。今後2021年度末(2022年3月期)にエネルギー変換効率10%を目指すとともに、同時に開発している分離膜技術と合成触媒技術を組み合わせ、化石資源が不要な化学品製造基盤技術の確立を目指す。 - 潮流発電を2018年に実用化へ、環境省が5年間の開発・実証事業
島国の日本にとって海洋エネルギーの開発は将来に向けた大きな課題だ。膨大な潜在量が見込まれる海洋エネルギーの中で、環境省は潮流発電に焦点を当てた技術開発プロジェクトを開始する。2018年の実用化を目指して、発電能力が500kW以上の設備を使った実証事業を推進していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.