再生可能エネルギーの出力変動も吸収、落差369mの揚水発電で電力網を安定化:自然エネルギー
北海道電力の「京極発電所」は、電力需要の少ない時に下部調整池から上部調整池へ水をくみあげておき、需要の多い時には落差を利用し発電する揚水方式の発電所だ。この仕組みを利用して再生可能エネルギーの出力変動などを吸収し、電力網の安定化に寄与している。
北海道電力は長期的な電力の安定供給を確保するため、バランスの取れた電力調達の多様化を進めている。この取り組みの1つとして、ピーク供給力としての役割や揚水による電力の貯蔵、電力系統の調整機能などをもつ純揚水式発電所である「京極発電所」の開発を進めている。そのうち同発電所の2号機がこのほど営業運転を開始した(図1)。
京極発電所は、虻田郡京極町北部の台地に上部調整池を設け、尻別川支流のペーペナイ川および美比内川の合流部に下部調整池である京極ダムを新設。上部調整池から京極ダムまでの落差369メートルを利用して、3台の水車・発電機により発電を行う北海道初の純揚水式発電所だ(図2)。
稼働を開始した最大出力20万kW(キロワット)の2号機は1号機と同様に、電気の周波数を一定に保つよう瞬時に入出力調整を行うシステム(可変速揚水発電システム)を採用しており、電気の品質維持に寄与するという。
発電機3台合計の最大出力は60万kW。2002年2月から建設に着手し、2013年11月に京極ダムの湛水を開始している。2014年2月に1号機が初揚水して有水試験(試運転)を開始し、同年10月には営業運転を始めた。2号機は2015年4月に有水試験を開始しており、このほど営業運転を開始するに至った。3号機の営業運転は2025年度以降になる予定だ。
京極発電所は可変速揚水発電システムにより、電力の需要変動、風力発電および太陽光発電といった再生可能エネルギーの出力変動への対応を可能にし、電気の品質維持に貢献する。また、北海道内の周波数が低下した場合に、自動的に発電運転を開始し周波数調整を行う機能(緊急起動機能)や、需要が少ない際は電力系統の電圧調整を行う機能(調相運転機能)も付加している。
揚水式発電所は発電所の上部と下部に大きな池(調整池)を持ち、電力需要の少ない時に下部調整池から上部調整池へ水をくみあげておき、電力需要の多い時に発電するという仕組み。上部調整池に流入する河川がなく、下部調整池から揚水分のみで発電する京極発電所のような純揚水式発電所と上部調整池に河川からの自然流入がある混合揚水式に分けられる。
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