ニュース
150度の高温で利用可能な全固体リチウム二次電池、基礎技術を開発:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
日立製作所と東北大学の研究グループは、高温環境下で活用可能な全固体二次電池において、電池内の内部抵抗を低減する技術を開発し、外気温150度の環境に置いて理論容量90%の電池動作を実現した。
複合正極層と剥離抑制接合層
内部抵抗の低減に成功した技術は主に2つの点による。1つ目は、正極材料の分解を抑制する複合正極層材料だ。従来、正極材料がLiBH4系錯体水素化物と接触すると分解反応が生じ、リチウムイオン伝導が阻害されるという課題があった。これを解決するため、酸化物固体材料(Li-B-Ti-O)を開発し、正極材料とLi-B-Ti-O材料で構成される複合正極層を作った。これにより、正極材料を保護し、分解によって増大する抵抗を抑制することができた結果、ほぼ0であった放電容量を理論容量の50%に改善することを可能とした。
2つ目が、固体電解質と複合正極層間の界面での抵抗を低減する剥離抑制接合層技術である。複合正極層の開発により、放電容量は理論容量の50%まで向上させることができたが、それ以上の改善は難しい状況だった。これは、充放電に伴い正極材料の体積が変化することで、複合正極層と固体電解質層間に剥離が生じ、界面抵抗が増えたことによるもの。そこで、剥離抑制接合層として低融点アミド添加錯体水素化物電解質を開発し、両層の間に配置した。これにより、全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗を約100分の1に低減した。
さらに、複合正極層技術と剥離抑制接合層技術により、放電容量が理論容量の90%にまで拡大(図2)。繰り返しの充放電に伴う電池容量低下も大きく改善し、安定した充放電が可能となることを実証した。
関連記事
- 安全で長寿命な「全固体リチウムイオン二次電池」が実現か、MITなどが開発
マサチューセッツ工科大学とサムスングループは、全固体リチウムイオン二次電池を実現する「固体電解質材料」を開発したと発表した。 - 容量密度は黒鉛の4.4倍、水素化マグネシウムを使った全固体二次電池の負極材を開発
広島大学の研究グループは、全固体リチウムイオン二次電池の負極材料として水素化マグネシウム、固体電解質として水素化ホウ素リチウムを利用し、高い性能が得られることを発見した。 - ダイソンが固体電池実用化に本腰、米ベンチャー企業を完全子会社化
英国ダイソンは2015年10月23日、固体電池技術の研究開発を進める米国Sakti3を完全子会社化すると発表した。Sakti3は電池技術開発ベンチャーで、プロトタイプとして開発した全固体電池は、バッテリー密度で1100Wh/l以上を実現したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.