走る水素ステーションが神奈川へ、遅れる普及に現実解としての「移動式」:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
神奈川県川崎市、相模原市、横浜市の3つの市で、移動式水素ステーションによる水素提供が始まる。JX日鉱日石エネルギーが提供する水素供給設備を搭載した大型トラックを利用するのが特徴だ。コスト課題が影響し普及の遅れが指摘される水素ステーションだが、定置式より設置費用が抑えられる移動式ステーションの採用は増えていきそうだ。
普及への“現実解”として期待される「移動式ステーション」
2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」に向け、水素社会の実現に向けた取り組みが加速している。既にFCVやFCバスなどの水素で駆動するモビリティが公道で走りはじめる一方、その普及を支えるインフラである水素ステーションの整備は遅れ気味だ。政府のロードマップでは2015年内に100カ所程度を整備する計画を掲げているが、実際に開所するのは2016年度末で80カ所強という見込みだ(関連記事)。
水素ステーションの普及が遅れる要因の1つに、設置コストの高さがある。一般的なガソリンスタンドのような定置式の水素ステーションの場合、設置コストは約5〜6億円だ。しかし今回JX日鉱日石エネルギーが展開するような移動式の水素ステーションであれば、設置コストを約半分まで下げられる。そこで水素ステーションの普及促進に向け、移動式ステーションの導入に注目が集まっている。
移動式は水素ステーションのもう1つの課題である収益面の課題にも対応しやすい。現状ではFCVの普及台数が少ないため、水素ステーションを設置しても稼働率が低く、運営事業者は収益確保に苦戦することが多い。しかし移動式であれば必要な場所に必要な量の水素を届けやすく、さらに定置式と比較して必要な設置面積も抑えられるため、高圧ガス保安法における距離規制もクリアしやすい。
規制緩和なども含めた設置コストの低減やFCVの普及が進むまでの間、水素ステーションの普及促進に向けて移動式ステーションの採用が現実解として進んでいく可能性は高い。今回の神奈川県の事例で利用するのは2台の移動式ステーションだが、“水素ステーションの設置場所”としては新たに3カ所がオープンしたとカウントすることもできる。
リース手法の活用事例も登場
移動式水素ステーションは、豊田通商と岩谷産業、大陽日酸の3社が共同設立した日本移動式水素ステーションサービスが、2015年3月から東京都内で日本初の商用サービスとして導入を開始した。以降、愛知県や福岡県でも導入が始まっている(関連記事)。
日本移動式水素ステーションサービスは、三井住友ファイナンス&リースのリースを活用して運営資金を調達しているが、三井住友ファイナンス&リースは2016年3月末から、埼玉県向けに水素ステーションのリース事業も開始する。メガソーラーでも活用事例があるように、こうしたリース手法の導入も水素ステーションの普及促進に向けた手段の1つになるだろう。
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