マグネシウム空気電池併設の自動販売機、災害時のライフラインとして活用:蓄電・発電機器
アサヒ飲料は、巽中央経營研究所と東北再生可能エネルギー協会が実施する「飲料自動販売機併設型マグネシウム空気電池導入プロジェクト」に参画し、マグネシウム空気電池を併設した災害対策用自動販売機を展開する。
アサヒ飲料では、以前から自動販売機を災害時におけるライフラインであると考え、飲料水の提供以外の社会貢献を進めてきた。今回新たに飲料用自動販売機に大容量発電が可能なマグネシウム空気電池を併設することで、約72時間にわたり非常時に飲料を提供し続けることを実現する他、生活に必要な最低限の電力を供給し、ライフラインを確保するというものだ(図1)。2016年1月から、福島県内の学校や病院といった避難場所を中心に100台を設置予定で、2017年以降も福島県以外の被災県指定避難所への設置も検討する。
環境負荷の低いマグネシウム空気電池
マグネシウム空気電池とは、負極に金属マグネシウム、正極に空気中の酸素、電解液に食塩水などを利用する燃料電池の1種である。地球上にほぼ無限に存在するマグネシウムと空気を燃料とし、二酸化炭素やその他の公害物質を出さないため、環境負荷のほとんどないことが特徴だ。ただ、発電容量や導入方法などが課題となっていた。
発電容量については、巽中央経營研究所が産業技術総合研究所の技術サポートを得て、大電力化のためのシステムを開発。従来の10倍の電流量にあたる12アンペア、72時間連続使用を実現し、今までの電池で稼働しなかったテレビやPC、複数の通信機器を同時に稼働させることが可能になったという(図2)。
利用時は手動でスイッチにより発電を開始。アサヒ飲料では今回マグネシウム空気電池を採用した理由として「大容量で72時間の連続使用が可能である他、資源が豊富で再生可能である点などがある」としている。また、飲料自販機の流通ルートを使って交換用電池の輸送・交換・回収・メンテナンスが容易に行える他、量産体制が完成すれば自動販売機への実装コストも比較的低いとしている。
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