木質バイオマス発電が日本海沿岸へ、離島に太陽光と風力と蓄電池:エネルギー列島2015年版(32)島根(3/3 ページ)
島根県は2019年度までに再生可能エネルギーによる電力の自給率を30%に高める計画だ。森林資源を生かした木質バイオマス発電所が2カ所で運転を開始したのに伴って、県内の未利用木材を効率的に集約できる体制を整備する。太陽光と風力発電も増えて、CO2フリーの電力が離島まで広がる。
再生可能エネルギーで離島を活性化
太陽光発電でも規模の大きいメガソーラーの建設計画が続々と始まっている。その中で最大のプロジェクトが「グリーンステップメガソーラー事業」である。島根県と出雲市の所有地を合わせた16万平方メートルの広大な用地に、合計5万枚の太陽光パネルを設置する(図7)。
発電能力は12.9MWで、2015年内に運転を開始する予定だ。完成すれば県内で最大のメガソーラーになる。年間の発電量は1300万kWhを見込んでいて、3700世帯分の電力を供給することができる。出雲市の総世帯数(3万5000世帯)の1割強に相当する。
メガソーラーの建設用地になった「グリーンステップ」は、近くを流れる斐伊川(ひいかわ)の治水対策で生まれた場所だ。放水路の建設で発生する大量の残土を処分した跡地である(図8)。島根県と出雲市が土地の活用法としてメガソーラーを選び、共同で事業者を公募して計画を推進した。
再生可能エネルギーの導入は離島の「隠岐(おき)」でも活発に始まっている。4つの島に合計2万人が暮らす大きな離島では、火力発電が主力の電力源の役割を担ってきた。日本海から島に吹き抜ける強い風と豊富な日射量を生かして、現在は風力発電と太陽光発電が拡大中だ(図9)。ただし天候の影響を受けて出力が変動するために、島内の電力需要に合わせて火力発電を調整する必要が生じてきた。
中国電力は国の補助金を受けて「ハイブリッド蓄電池システム」の実証事業を9月末に開始した。4つの島のうちの1カ所に変電所を新設して、2種類の蓄電池で電力の需給バランスを調整する(図10)。太陽光と風力で変動する電力を蓄電池に充電しながら、需要に合わせて放電する仕組みだ。
2種類の蓄電池のうち1種類は小さな変動に素早く対応する一方、もう1種類は大容量を生かして大きな変動を吸収することができる。国内で初めての取り組みで、その成果は全国の離島に限らず、太陽光と風力が拡大している多くの地域で生かせる期待がある。最先端の変電所には視察で多くの来訪者が見込める。再生可能エネルギーは離島の活性化にも大いに役立つ。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −中国編−」をダウンロード
2016年版(32)島根:「古い水力発電所を再生、太陽光とバイオマスを加えて自給率30%超へ」
2014年版(32)島根:「日本海に浮かぶ4つの島、再エネと蓄電池による電力供給に挑む」
2013年版(32)島根:「森林率78%が生み出す木質バイオマス、日本海の風は77基の大型風車へ」
関連記事
- 森林率が79%の市にバイオマス発電所、2万4000世帯分の電力を7月から供給
日本海に面した島根県の江津市で大規模な木質バイオマス発電所が完成して、7月1日に運転を開始する。地域の森林から生まれる未利用の木材を中心に年間で11万5000トンの木質バイオマスを利用する計画だ。市の総世帯数の2倍以上にあたる2万4000世帯分の電力を供給することができる。 - 島で使う電力の100%を太陽光と風力で、2種類の蓄電池がCO2を減らす
日本海に浮かぶ島根県の隠岐諸島で日本初の実証事業が始まった。特性の違う2種類の蓄電池を変電所の構内に設置して、島内の発電設備を最適に制御する試みだ。電力の需要が小さい時期には太陽光と風力で島の電力を供給できるようになり、火力発電の稼働を抑えてCO2排出量を削減する。 - 再生可能エネルギーの電力30%超へ、風力とバイオマスが増える島根県
島根県が7年ぶりに再生可能エネルギーの推進計画を刷新して、2019年度に県内の電力消費量の30%以上を再生可能エネルギーで供給する目標を決めた。地域の特性を生かして風力とバイオマスを伸ばしながら、太陽光と小水力も加えて5年間で発電量を1.4倍に拡大する方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.