治水用のダムは小水力発電に生かす、売電で年間3000万円の収入:自然エネルギー
豪雪地帯の山形県では豊富な水量を活用した小水力発電の導入が活発に進んでいる。宮城県との県境にある治水用のダムでも12月1日から発電事業が始まる。ダムから33メートルの落差を生かして、年間に270世帯分の電力を供給することが可能だ。ダムの維持管理に利用した余剰分を売電する。
山形県から日本海へ流れる最上川は日本三大急流の1つとして知られている。その上流にある「白水川(しろみずがわ)ダム」の直下で、12月1日に小水力発電所が運転を開始する(図1)。
ダムを管理する山形県の村山総合支庁が実施する発電事業で、県営のダムに建設した9カ所目の水力発電所になる。
白水川ダムの役割は周辺地域の洪水を防ぎながら農業用水を供給することにある。加えて下流の自然環境を保護するために河川維持用水を常に流している。これまで2種類の用水のための放流水は発電に利用していなかったが、新たに発電所を建設して未利用の水力エネルギーから電力を生み出す(図2)。
発電能力は180kW(キロワット)で、年間に96万kWh(キロワット時)の電力を供給できる見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して270世帯分の電力になる。発電した電力はダムの維持管理用に消費した余剰分を固定価格買取制度で売電する。売電先は東北電力で、年間に約3000万円の収入を想定している。発電能力が200kW未満の小水力発電の買取価格は1kWhあたり34円(税抜き)である。
ダムから水車発電機に取り込む水流の落差は33メートルもある。最大で毎秒0.71立方メートルの水量で180kWの電力を供給する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は60%になり、小水力発電では標準的な水準だ。水車発電機には落差が大きい場合に適している横軸フランシス水車を採用した(図3)。
山形県では高い山から流れる豊富な水量を生かして、小水力発電の導入が活発に進んでいる。小水力発電を導入できるポテンシャルは全国でも8番目に大きい。導入場所はダムや農業用水路が多く、県が管理するダムにも大規模な水力発電所に加えて小水力発電所が拡大してきた(図4)。
山形県営の12カ所のダムのうち、各地方を管轄する総合支庁が7カ所を管理していて、新設の白水川ダム発電所を加えると5カ所で小水力発電を実施することになる。このほかに県の企業局が管理する5カ所のダムにも発電所を展開する。5番目の「神室(かむろ)ダム」の小水力発電所(発電能力420kW)が2015年度内に運転を開始する予定だ。
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