「直流エアコン」がついに発売へ、12月にシャープが業界初:省エネ機器(2/2 ページ)
シャープは業界で初めて、交流電流と直流電流のどちらの電流も受けられるハイブリッド型エアコンを2015年12月中旬に発売する。月産300台を計画する。
DCハイブリッドエアコンはHEMSや蓄電池とのセット販売
シャープでは、DCハイブリッドエアコンシリーズとして、冷房能力が7.1kW(キロワット、主に23畳クラス)の「JH-D716J2」と、5.6kW(主に18畳クラス)の「JH-D566J2」、4.0kW(主に14畳クラス)の「JH-D406J2」の3機種を用意。希望小売価格は7.1kWが69万円(税別)、5.6kWが59万円(同)、4.0kWが52万円(同)となっており、DC対応機能がない通常のエアコン製品と比べてそれぞれ20万円以上も高額となっている。
同社では「個別で価格設定はしているが、基本的には単体で販売する製品ではなく、クラウドHEMSやクラウド蓄電池システムなどと組み合わせて使う製品だと考えている」(シャープ広報)としている。セット販売の価格は、4.0kWのDCハイブリッドエアコンとクラウドHEMS、パワーコンディショナー、リチウムイオン蓄電池システム、HEMSモニター、センサーやケーブル類などを合わせて267万5000円と設定されているという。
セットで導入することで、深夜の割安な電力を蓄えて、電気代が割高な時間帯に使用することが可能となる他、時間帯や太陽光発電の状況、蓄電池の残量などに応じて、DC/ACを自動で切り替えて最適な運転を行えるようになる。
これらのセットシステムに太陽光発電システムを組み合わせたシャープ内の実証試験では、太陽光発電システムの売電料金と自家内活用、DCハイブリッドエアコンの省エネ効果、蓄電池による夜間電力による電気料金削減などを組み合わせ、年間で24万円の電気料金削減効果を得ることができたという。
ただ、先述したセットシステムの価格と太陽光発電システムを設置する価格を足すと300万円台後半から400万円規模の費用が掛かることになり、年間24万円の削減効果を順調に得られたとしても、回収には16〜17年はかかる見通しだ。
ZEHへの動きがポイントに
これらの回収期間を考えると、現状の枠組みで既築家屋への販売については現実的には難しいことが考えられる。そこでポイントになるのがZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)である。ZEHとは、住宅の年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロとなる住宅のことで、政府の方針で「2020年までに標準的な新築住宅でZEHを実現」と「2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現」という目標が掲げられている。
ZEHを実現するためには「電力使用量以上に発電する」ということも考えられるが、ZEHロードマップ検討委員会などが検討を進めている中での定義では、まず「20%以上の省エネ」が条件とされるなど、使用エネルギーの削減も大きなテーマとなっている。「直流家電」はこのZEHの省エネ条件に対して大きな効果を発揮することが予測される。
2015年11月26日に行われた政府と民間の「未来投資に向けた官民対話」では「2020年までに、ハウスメーカーなどの新築戸建の過半数をネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化する」という話も出ており(関連記事)、ZEH化の動きに対する直流家電の動きに注目が集まっている。
関連記事
- シャープの「直流エアコン」2015年内発売へ、カギは蓄電池と室外機のDC接続
シャープは2015年7月29〜31日の3日間、東京ビッグサイトで開催されている太陽光発電関連の展示会「PVJapan2015」に出展し、直流給電を利用した「直流エアコン」を披露した。 - シャープが「直流家電」実用化へ、AC/DC切り替え機能を持つエアコンなどを開発
シャープは、「直流家電」の実用化に向けて取り組みを本格化させる。AC/DC切り替え機能を持つエアコンやこれらを制御するHEMS、蓄電池システムなどを開発。実用化に向けた取り組みを進めていく。 - 電力の世界を二分する「直流」と「交流」
ノートパソコンを買うと必ず付いてくるのが「ACアダプタ」という付属装置。これがなければ携帯性が高まるのに、そうはいかない。コンセントから来る電力は交流(AC)で、パソコンの中で使う電力は直流(DC)のために、アダプタで変換する必要がある。なぜそんな面倒な仕組みになっているのか。 - 交流から直流へ変えると8%も効率が上がる、2025年には2.3GWが直流に
送配電技術に期待されるのは信頼性と容量、損失の少なさだ。このうち損失をさらに低くする技術として期待が掛かるのが直流送電だ。直流送電には既に大規模な事例もあり、2025年には2013年比で12倍にも成長するという。 - 太陽光の電力を売電しながら充電、出力制御に対応できる蓄電池
固定価格買取制度の運用ルールが変更になり、地域によっては住宅用の太陽光発電に対しても電力会社から出力制御を求められるようになった。シャープは出力制御に対応できる蓄電池システムの新製品を5月に発売する。太陽光で発電した電力を売電しながら一部を充電することができる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.