「なまはげライン」をバッテリー電車が走る、架線いらずでローカル線にメリット:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
JR東日本は秋田県西部の男鹿半島を走る男鹿線に、2017年春から新型の蓄電池電車を導入する。リチウムイオンバッテリーを搭載し、架線が整備されていない非電化区間でも電力を使ってクリーンに走行できる。
ローカル線への導入が期待される蓄電池電車
JR東日本は既に2014年3月から栃木県を走る烏山線に蓄電池電車を導入している(図4)。烏山線は全て非電化区間だが、東北本線に切り替わる宝積寺駅からは直流電化区間に入る。男鹿線と類似した路線だ(図5)。非電化区間は男鹿線より6キロメートル短い20.4キロメートルで、それに伴い烏山線に導入した車両の蓄電池容量も95kWh小さくなっている。
架線を使わずに走行できる蓄電池電車は、ローカル路線の運営および環境負荷の低減に貢献するとして、導入が期待されている。東京都や神奈川県などの路線が完全に電化されている地域とは異なり、地方のローカル線は全てが非電化区間であったり、電化区間と非電化区間が混在していたりする路線が多く残っているためだ。利用者が少ないため、電化する計画が立たない場合も多い。
蓄電池電車を活用すれば、区間が混在している路線であっても直通運転が可能になる。非電化区間を走行する車両は軽油によるディーゼル運転方式を採用する場合があるが、これによるCO2排出量の削減にもつながる。さらに燃料コストやメンテナンスコストも削減できるため、運行コストの低減も期待できる。
しかし先述したように蓄電池車両はその車両に搭載できるバッテリーの容量と、走行する路線環境とのバランスを検証していく必要がある。今後バッテリーの性能が飛躍的に向上すればこうした課題もクリアできるが、現時点では個々の路線に合わせた事前検証が欠かせない。
こうした蓄電池電車の実用化に向け、国内でいち早く開発に注力してきたのがJR九州だ。同社は鉄道総合技術研究所と協力して、2012年から蓄電池電車の導入に向けた技術開発を進めている。福岡県北部を走る筑豊本線の福北ゆたか線の一部と若松線に、2015年秋をめどに先行導入する計画だ。JR東日本が男鹿線に導入予定の車両は、JR九州が開発を進める車両をベースにカスタマイズを加えたものだ。
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