固体酸化物形燃料電池の実用化に向け実証を開始、2017年に市場投入へ:蓄電・発電機器
NEDOは、水素利用の拡大に向け、業務用SOFCシステムの実用化技術の開発で新たな2テーマに着手する。5kW級の業務用SOFCシステムと250kW級のシステムで、2017年に市場投入を目指す。
燃料電池は、エネルギー消費量や環境負荷の低減が期待されている蓄電・発電機器で、CO2も放射能も排出しないクリーンなエネルギーとして注目を集めている。2009年には家庭用燃料電池「エネファーム」が市場導入され、現在までに約14万台の販売実績がある。ただ、政府は2050年までの水素社会実現に向けて、燃料電池のさらなる利用用途の拡大を推進する方針で2014年6月には「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定(関連記事)。ここでは2017年の業務用燃料電池の市場導入が目標に掲げられている。
こうした背景のもと、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では業務用のより大きな出力の燃料電池を実現するために、NEDOプロジェクト「固体酸化物形燃料電池(SOFC)など実用化推進技術開発」(2013〜2017年度)において、燃料電池の本格普及および中・大容量システムへの展開のための技術開発および実証研究を実施。今回新たに数〜数百kW(キロワット)級の業務用SOFCシステムの実用化技術の開発に取り組むことを決めた。
SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)は、電解質としてイオン伝導性セラミックスを用いている固体型の燃料電池である。作動温度は700〜900℃で、燃料には水素の他に天然ガスなどを利用可能である点が特徴だ。今回新たにNEDOが取り組むのは助成予定先をデンソーとした5kW級の業務用SOFCシステムと、助成予定先を三菱日立パワーシステムズ、トヨタ自動車、日本特殊陶業の3社とした250kW級のシステムである。それぞれ2017年市場投入を目指すとしている。
飲食店、理美容院などで使える業務用燃料電池
デンソーが助成先となる5kW級の業務用SOFCシステムは、飲食店、理美容院、小規模医療、福祉施設などをユーザーとして想定。ユーザーに最適なシステムの基本設計、耐久性に関する課題抽出とその対策に取り組むとともに、システムの導入効果の検証などを行う(図1)。
SOFCハイブリッドのガスタービン
三菱日立パワーシステムズ、トヨタ自動車、日本特殊陶業の3社が助成先となる250kW級のシステムは、SOFCとマイクロガスタービンを組み合わせた円筒形SOFC-マイクロガスタービンハイブリッドシステムである。実負荷条件下で実用化開発を進め、セルスタック性能や耐久性、システム運用性、安全性などのデータを取得。評価・検証を行う。また、システム製造や設置コストの低減などにも取り組む(図2)。
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