保育園の屋上運動場に営農型発電システム、熱中症から園児を守る:太陽光
農地に高さのある架台を設置し、太陽光発電と農業を同時に行うソーラーシェアリング。このシステムを保育園の屋上運動場に活用する事例が登場した。園内で使用する電力を太陽光で賄うとともに、パネルが日陰を作ることで園児を熱中症から守る役割も担う。
ソーラーフェニックスは、千葉県松戸市にある保育園ビルの屋上運動場に、同社の太陽光発電システム「グリーン&ソーラー――MEGA10」(以下、MEGA10)を設置した。ソーラーシェアリング用のパネル架台を活用しているのが特徴で、再生可能エネルギーの利用だけでなく、パネルが日陰を作り園児を熱中症から守る役割も担う。同社によればこうした屋上運動場へのソーラーシェアリング架台の設置は日本初の事例になるという(図1)。
太陽光発電システムを導入した保育園ビルは、新築RC(鉄筋コンクリート)造りの5階建て。全フロアが保育園となっており、101人の園児が入園している。駅から至近距離に位置し、交通量が多く敷地面積も限られていたため、園児の安全を考慮して運動場を屋上に建設している。この241平方メートルの運動場にソーラーシェアリング架台設置し、高さ3メートルほどの位置に138枚の小型ソーラーパネルを並べている。合計出力は約18kW(キロワット)で、発電した電力は全て保育園内で利用する。
本来ソーラーシェアリングとは、農地に高さ3〜4メートルの支柱を立て、上部架台に太陽光パネルを並べて発電する手法だ。農業と同時に太陽光発電を行えるとして、全国の農地で設置する事例も登場し始めている。今回設置しているソーラーフェニックスのMEGA10も、ソーラーシェアリング向けのシステムだ。
このソーラーシェアリングにヒントを得て同保育園ビルを設計した熊倉洋介建築設計事務所は「太陽光パネルで日陰を作って園児を熱中症から守ると同時に、太陽光を活用して災害時にも電力が確保できるため、防災拠点として利用できる」としている。
ビルの屋上など高所に設置する太陽光発電システムは、風を考慮して低層の架台しか設置できないことが多い。今回の場合は風の負荷が小さい小型の太陽光パネルを採用し、さらに新開発のパネル固定用ワンタッチグリップを新開発して耐久性を増強。さらにMEGA10の特徴であるパネルの回転機構を活用して、季節ごとに変化する太陽光の位置に合わせてパネル角度を変えると同時に、強風時にはパネルを水平にすることで風による被害を防ぐ仕組みだ。
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