東芝の二次電池、導入加速のカギは「分散型電力」:蓄電・発電機器
東芝は、オートメーション技術の展示会「システムコントロールフェア(SCF)2015」(2015年12月2〜4日、東京ビッグサイト)に出展。同社のリチウムイオン二次電池である「SCiB」を搭載した各種のバッテリーシステムやソリューションを提案した。
SCiBは、東芝が2007年12月に発表した産業機器向けのリチウムイオン二次電池である。負極材料にチタン酸リチウム(LTO)を用いたことが特徴で、外力などで内部短絡が生じても熱暴走を起こしにくい。また、充放電1万回以上の長寿命、6分間での急速充電、キャパシタ並みの入出力密度、ー30度低温での動作などの特性がある(図1)。
これらの特性から電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)、フォークリフトや電動アシスト自転車、電動バイク、床洗浄機などの業務用機器、UPS、家庭用蓄電池など、さまざまな用途での導入が進んできた。
差別化のポイントは「長寿命」と「安全性」
SCiBの標準セルの仕様は、形状が角型、公称電圧が2.4V、公称容量が4.2Ah、サイズが62mm×95mm×13mm、重量が155g。そして、電池が出力できる電流量の指標とされる出力密度は1000W/kg以上、重量当たりの蓄電量の指標となるエネルギー密度は約65Wh/kgである。セル1つあたりの価格については通常のリチウムイオン二次電池とそれほど変わらないが、電圧は多くのリチウムイオン二次電池よりも低いことから、電圧が要求されるような用途では、必要個数が増え、価格がどうしても高くなるという課題を抱えていた。
そのため「現状では差別化につながるポイントは『長寿命』と『安全性』になっており、今は多くの数が出るような用途としては、電力安定化関連や分散型電力システムなど、電力関係が中心だと考えている」(ブース担当者)という。SCFでも実際にさまざまな電力関係のソリューションを提案。家庭用蓄電池システム「エネグーン」の他、鉛蓄電池とSCiBを組み合わせコスト競争力を実現した「複合型蓄電池システム」など分散型電力システムを実現するSCiBシステムを紹介(図2)。
その他、SCiBを活用した自立型システムとして、「LED照明付き自立型ソーラーカメラシステム」などもアピールした(図3)。同システムはソーラーパネルで発電した電力で照明とカメラを稼働させるシステムで、ソーラーでの発電ができない日が3日続いても、SCiBに蓄電した電力を使い3日間は録画可能となっている。
その他、小水力発電の電力安定化システムをイメージしたSCiBの活用なども提案。SCiBの特性を生かした電力関連需要を掘り起こしていく方針だ。
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