高架を走るモノレール、蓄電池で弱点カバー:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
大電力を利用する鉄道では、さまざまな省エネルギー技術を導入する余地がある。多摩都市モノレール(東京都)は、モノレール特有の弱点を解消するために蓄電池技術を採用する。省エネルギーにも役立つ技術だ。
導入実績のあるシステムを選んだ
「回生電力の吸収では、出力(キロワット)が大きな電池系統を必要とし、非常時の電池系統では容量(キロワット時)がなくてはならない」(多摩都市モノレール)。
多摩都市モノレールが選んだのは、GSユアサが開発した「E3 Solution System」だ。GSユアサは2015年11月24日に装置の構成を発表。多摩都市モノレールの要求に応じて、回生用と非常用の2つの系統を備えた電力貯蔵装置となった。「2006年にE3 Solution Systemを製品化しており、今回は6番目の導入事例となる」(GSユアサ)*2)。
回生吸収用リチウムイオン電池の容量は、74.88キロワット時。非常走行用リチウムイオン電池の容量は202.46キロワット時。この2つを用途によって切り替え、1000キロワットの双方向DC/DCコンバータ2台を経由して、き車線(線路)に送り出す(図4)。
*2) GSユアサは3つの導入事例を明らかにしている。JR西日本北陸本線の新疋田変電所(1080キロワット、2006年)、鹿児島市交通局の桜島桟橋通停と中洲通停(250キロワット、2007年)、東武鉄道の上福岡き電区分所(1800キロワット、2012年)である。
回生吸収用には、同社の電池モジュール「LIM25H-8」を26直列4並列に接続した(図5)。同モジュールは高出力に特徴があり、充放電電流は600アンペアだ(容量25アンペア時、電圧28.8ボルト)。
非常走行用は容量が大きい「LIM50EN-12」。これを16直列6並列に並べた。モジュールの容量は47.5アンペア時(電流300アンペア、電圧44.4ボルト)。
関連記事
- ラッシュ時にも電圧を維持、年間21万kWhを節電
東武鉄道は2014年12月22日、電車が減速する際のエネルギーを電力に変えて蓄える「回生電力貯蔵装置」の運用を開始した。変電所間の距離が長い東武野田線の運河駅に装置を導入することで、年間21万kWhの電力量を削減できる。 - 電車が生み出す回生電力を融通、減速中の車両から加速中の車両へ
電車がブレーキをかけた時に発生する「回生電力」を活用する取り組みが広がってきた。JR東日本は東京と東北を結ぶ常磐線の一部の区間に、回生電力を電車同士で融通できる仕組みを導入した。回生電力の利用率を高めることにより、電力会社から購入する電力を抑制する。 - 地下鉄を停電時に動かす、東京メトロと日立が協力
日立製作所は鉄道用の蓄電池式回生電力貯蔵装置「B-CHOPシステム」を複数の顧客に提供している。このシステムを改良して、停電時に電力を供給できる「EM-B traction」を開発中だ。東京メトロの葛西駅で2014年1月から実験が始まる。 - 鉄道システム全体で電力使用量5%削減、回生電力を列車間で融通
最新の電車や自動車ではブレーキ時に発電する「回生電力」を利用できるものが増えている。三菱電機は複数の列車が作り出す回生電力をネットワークで融通し合う技術を開発した。全体の電力使用量を最大5%削減できる。蓄電池などと組み合わせることも可能で、2014年度の事業化を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.