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プラスチックの太陽電池、効率改善に役立つ不思議な挙動:蓄電・発電機器(2/3 ページ)
有機薄膜太陽電池は、シリコン太陽電池とは異なる利点がある。軽量化しやすく、製造時のエネルギーが少ない。弱点は変換効率だ。理化学研究所と京都大学の研究チームは、変換効率向上の邪魔になっていた「光エネルギー損失」を大幅に引き下げる分子を開発した。
エネルギー差がないのに電子が移動する
図3に有機薄膜太陽電池(OPV)のエネルギー状態の変化と、電力が生まれる仕組みを示した。
図左は一般的な有機薄膜太陽電池の動作。(1)で太陽光を受けて分子が励起状態に変わる。このエネルギーをそのまま取り出すことができれば、高い電圧を得ることが可能だ。しかし(2)のように、いったん駆動力としてエネルギーを失なって電荷移動状態にならないと、電流が流れない。これ以外の要因もあるため、損失の合計(光エネルギー損失)は0.7〜1.0電子ボルトにも及ぶ。
図右は、開発したPNOz4T分子が太陽光を受けたときの状態変化だ。一般的な有機半導体分子とは異なり、駆動力によるエネルギー損失がほとんどない。そのため、光エネルギーの損失を無機系の半導体に近い0.5電子ボルトに抑えることができた。
「今回の研究で面白いのは、なぜ駆動力がゼロになるのかが分からないことだ。伝導帯のエネルギー準位に段差がないのに、PNOz4Tからフラーレンへ電子が移動してしまう。駆動力を少なくする設計指針に従って分子を設計したところ、ゼロになってしまった(図4)。今後はゼロになるメカニズムを解明し、これを他の分子に適用していくことで、高い変換効率を実現できると考えている」(同氏)。
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