瀬戸内海の島で太陽光発電、工場や家庭の廃棄物はバイオマスに:エネルギー列島2015年版(34)広島(3/3 ページ)
広島県で太陽光発電が急速に広がってきた。県内最大のメガソーラーが瀬戸内海の離島で運転を開始したのに続き、テーマパークやゴルフ場の跡地でも建設計画が始まっている。太陽光発電に加えて、木材や生ごみを利用したバイオマス発電、さらにはダムの直下で小水力発電も動き出す。
農業用ダムで41メートルの落差を生かす
広島県の再生可能エネルギーは太陽光とバイオマスを中心に急速に拡大して、バイオマス発電の導入量は全国で6位になっている(図7)。さらに新しい小水力発電所の建設計画も動き出した。
再生可能エネルギーを推進する県の環境県民局が農業用ダムをはじめ55カ所を対象に小水力発電の導入可能性を検討した結果、第1の候補になったのが県中部の世羅町(せらちょう)にある「三川(みかわ)ダム」である。1960年に完成したダムで、現在は農業用水のほかに水道用水や工業用水を供給する役割を担っている。
このダムから下流に向かって120メートルほどの場所に、小水力発電施設を建設中だ(図8)。ダムの直下にある放水バルブから導水管を引き込んで発電に利用する。水流の落差は41メートルになり、最大で500kW(キロワット)の電力を供給することができる。2015年度内に運転を開始して、年間の発電量は230万kWhを見込んでいる。
現在でも広島県内には稼働中の小水力発電所が29カ所にある。大半は1950〜60年代にかけて造られた古い設備で、固定価格買取制度の対象にはならない。民間企業が運営していて、発電した電力は1kWhあたり9円の安い価格で電力会社に売電している。
すでに老朽化が著しい発電設備もあり、設備を更新すれば固定価格買取制度を適用することが可能になる。最高34円(税抜き)で売電できることから、多くの事業者が発電設備の更新を検討中だ。太陽光発電と同様に県が先行事例を作ったうえで、民間事業者の導入を促進していく。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −中国編−」をダウンロード
2016年版(34)広島:「遊園地がメガソーラーに、島にはCO2の少ない石炭火力発電所」
2014年版(34)広島:「メガソーラーの収益を地域に還元、自治体と電力会社が手を結ぶ」
2013年版(34)広島:「石炭火力発電が瀬戸内海の工業地帯で進化、バイオマスと太陽光も後押し」
関連記事
- 再生可能エネルギーの賦課金を取り戻せ、広島県が直営のメガソーラーを展開
固定価格買取制度の開始に伴って、電力会社は事業者から買い取った電力のコストを「賦課金」として毎月の電気料金に上乗せしている。広島県は県民が負担する賦課金の一部をメガソーラーからの収益でカバーすることによって、賦課金の影響を抑制する試みを開始した。 - 2つの川の高低差で発電、分水路を生かして620世帯分の電力
中国山地から流れる2つの川をつなぐ分水路がある。この分水路の水流を利用した小水力発電所の建設工事が始まった。水流の落差は27.5メートルになり、一般家庭で620世帯分の電力を供給できる。取水口から発電機まで水を送るための水圧管路には初めてポリエチレン管を採用した。 - 電力小売にJFEエンジニアリングも、全国の廃棄物発電を活用
大規模な発電プラントの建設を数多く手がけるJFEエンジニアリングが、4月1日から電力の小売事業に参入した。全国各地に建設した廃棄物発電プラントの電力を主体に首都圏で小売を開始する。電力小売の全面自由化が始まる2016年には販売量を5億kWhの規模に拡大する計画だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.