“世界一過酷なモーターレース”に、藻から作ったバイオ燃料で挑む:自然エネルギー
微細藻類を利用したバイオ燃料の開発競争が進んでいる。デンソーは同社が特許を持つ藻類「シュードコリシスチス」から作ったバイオ燃料を、自動車レース「ダカールラリー2016」に参戦するトヨタ車体に提供する。
厳しい環境が連続する8000キロメートル以上の行程を数週間かけて走破することから、“世界で一過酷なモータースポーツ”とも呼ばれる「ダカール・ラリー」。デンソーは2016年1月からアルゼンチンで始まる「ダカール・ラリー2016」に参加するトヨタ車体に、微細藻類から生成したバイオディーゼル燃料を提供すると発表した。
提供するのはトヨタ車体のラリーチーム「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー」。同チームは1995年からダカール・ラリーに参戦していて、過去には3連覇した実績もある。2016年大会はトヨタのランドクルーザーをベースとした2台のラリーカーで走破に挑む(図1)。
デンソーが提供するのは、同社が特許を持つ「シュードコリシスチス」というオイルを生成する微細藻類を使って製造したバイオディーゼル燃料だ。同社は2008年から藻類を使ったバイオ燃料の開発に向けて研究を進めている。今回提供するのは愛知県西尾市にある善明製作所で製造したものだ。
デンソーは2018年度をめどに藻から抽出したバイオ燃料を実用化する計画で、これに向け熊本県天草市にある2万平方メートルの廃校跡地に藻類の大規模培養施設の建設を進めている。2016年4月から稼働する予定だ(図2)。
トヨタ車体チームは、2007年からラリーに使用する燃料に、従業員やスポンサー、地域の小中学校などから集めた植物由来の廃食油を改質したバイオディーゼル燃料を使用している。2011年大会からは使用率100%で走行している。これに2016年大会から新たにデンソーの藻類を原料とした燃料が加わることになる。こうした植物から生成するバイオディーゼル燃料を使うことで、一般的なディーゼル燃料を使用して走行した場合と比較して約60%のCO2低減効果が見込めるという。
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