薄膜の太陽電池で新記録、22.3%のCIS:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
シリコンを使わない太陽電池に勢いがある。銅とインジウム、セレンを用いた化合物半導体「CIS」を薄膜に加工した、低コストで生産性の高い太陽電池だ。ソーラーフロンティアは、2015年12月、CIS薄膜太陽電池の変換効率が22.3%に達し、世界記録を更新したと発表した。製品に直結する技術だという。
発電コスト7円/kWh実現への道
今回の開発成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が募集した「太陽光発電システム次世代高性能技術の開発」成果だ。ソーラーフロンティア(大面積モジュール担当)と東京理科大学(小面積セル担当)が、2010年8月から2015年2月までCIS薄膜太陽電池の性能向上に取り組んだ。
太陽電池に対するNEDOの事業目的は、現在の火力発電並みの発電コスト(7円/キロワット時)を実現すること。変換効率の向上は発電コストの引き下げに役立つ。薄膜系太陽電池はそもそも省資源で生産性が高いため、変換効率を向上できれば発電コストの低減に向くと指摘している*2)。
今回の事業では複数の太陽電池技術に取り組んでおり、CIS関連の事業のうち、変換効率向上を目指す研究では図3のような目標を掲げた。
*2) 結晶シリコン太陽電池の発電層の厚みは0.2ミリメートル(200マイクロメートル)程度、これに対し、CIS薄膜太陽電池では2マイクロメートルと薄い。100分の1だ。これが省資源に効く。結晶シリコン太陽電池のように別々に製造した十数センチメートル角のセルを接続してモジュールを作るのではなく、いきなり60×120センチメートルのモジュールを製造可能だ(ただし、セルに切り分けるスクライビング工程が必要)。これが高い生産性につながる。
目標のうち、「サブモジュール(30cm角程度)」の変換効率では18.3%を実現し、NEDOの目標をクリアした。事業の途中で図3にない「20%以上薄膜化した低コストCISサブモジュールで変換効率17.5%」という目標が加わっている。これに対して、「30%薄膜化した低コストCISサブモジュールで変換効率17.8%」という成果を挙げた。
「NEDOの目標は実用太陽電池の性能向上にある。小面積セルの変換効率では(図3の)最終目標をクリアしていないが、サブモジュールで達成しているため、問題はないと考える」(NEDO)。
小面積セルの性能が製品に「降りてくる」
2015年10月末、NEDOが採択した新エネルギー関連の事業の成果報告会(平成27年度NEDO新エネルギー成果報告会太陽光発電分野)が開催された。会場では、ソーラーフロンティア厚木リサーチセンター技術開発部開発第2グループで課長を務める杉本広紀氏が、事業の成果を発表。どのようにしてCIS薄膜太陽電池を高効率化したかを説明した。
発表ではサブモジュールの成果を中心に扱った。同社は厚木リサーチセンターで高効率化技術を開発、量産工場へ高効率化技術を適用するというサイクルを回すことで、これまで着実に変換効率を高めてきたという(図4)。
図4には(1)〜(5)の順で高効率化技術が製品に適用されていく様子が描かれている。小面積セルの成果を30センチメートル角のサブモジュールに適用、さらに60×120センチメートル角の製品へと広げる。
図4ではソーラーフロンティアが2014年4月に発表した20.9%という小面積セルの性能が前提になっている。今後は出発点が22.3%に高まる。
今回22.3%を実現した小面積セルの製造技術は、ソーラーフロンティアが主力工場で採用している技術と同じだとNEDOは指摘している。「実際に組み立てる工場が宮崎県の国富工場になるのか宮城県の東北工場になるのか、現時点では分からないが、NEDOの指摘は正しい」(ソーラーフロンティア)。
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