圧縮機を使わず高圧水素を供給可能に、水素ステーションのコスト大幅削減へ:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
日本国内で整備が進められている水素ステーション。しかしさらなる普及には現在1基当たり3〜6億円かかる設置コストの低減が必須だ。産業技術総合研究所などの研究チームは圧縮機を使わずに高圧水素を連続供給する技術を開発した。設置コストの多くを占める水素の圧縮コストの低減に貢献するという。
93%の精度で水素を抽出
ギ酸から得られた水素と二酸化炭素の高圧混合ガスは、超臨界流体という状態にある。ここから一気に冷却して超臨界状態から高圧状態へ変化させると、気相(主に水素)と液相(主に二酸化炭素)の2相に分離する現象を利用して水素を取り出す仕組みだ(図3)。
実験では30MPaの高圧混合ガスを、マイクロ熱交換器でマイナス10度に冷却したところ、均一相の状態から気相と液相の2相に分離した。その後冷却温度をマイナス50度まで低くして上部の気相の成分を測定すると、水素が85%、二酸化炭素が15%となった。
なおこの方法を用いれば、理想的には純度93%にまで水素を精製することができ、将来、より迅速に冷却が可能な熱交換器の導入や、別途高圧下での二酸化炭素の吸収除去技術と併用すれば、実用に耐えうる99.99%以上の純度の高い高圧水素をギ酸から得られるという。
研究グループでは今後、水素ステーション建設時に必要な圧縮機の設置や運転時に必要な圧縮エネルギーなどを抑制できる技術として、より実用的に近いレベルを目指す。具体的には燃料電池車への充填圧力である70MPaの高圧水素の純度を99.999%に近づける技術の開発などを行う。また、得られた高圧の液体二酸化炭素も活用することで、理想的な水素キャリアシステムの構築に向け、さらなる研究開発を進めるとしている。
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