CO2フリーの水素を動物園や市場へ、農山村に小水力発電と竹バイオマス:エネルギー列島2015年版(35)山口(3/3 ページ)
未来のエネルギーとして期待が大きい水素の導入プロジェクトが山口県で動き出した。瀬戸内海に面した周南市では動物園や卸売市場に燃料電池を導入して、電力と温水の供給を開始した。農山村地域には小水力発電が広がり、大量に繁る竹を燃料に利用できるバイオマス発電所の建設も進む。
世界初の竹専焼バイオマス発電所
山口県の再生可能エネルギーは太陽光・中小水力・バイオマスの3種類が拡大してきた(図7)。発電能力では太陽光が多いが、安定した電力の供給源として水力とバイオマスが重要な役割を担う。
地域に豊富にある森林資源を生かした木質バイオマスの導入も始まっている。木質バイオマスの中でも世界で初めて竹だけを燃料に使う商用の発電所を建設するプロジェクトがある。山陽小野田市の企業団地で2017年1月の運転開始を目指している(図8)。
山口県は竹林の面積が全国で4番目に広い。竹が繁茂してスギやヒノキの成長を阻害する問題があり、森林組合が中心になって竹の伐採に取り組んでいる。この伐採した竹をチップにして、バイオマス発電の燃料に利用する。
建設中の竹バイオマス発電所は2MWの電力を供給することができて、年間の発電量は1580万kWhに達する見込みだ。4400世帯分に相当する電力で、山陽小野田市の総世帯数(2万8700世帯)の15%をカバーすることができる。
バイオマスを利用した発電設備は下水処理場にも広がっていく。下関市が運営する4カ所の下水処理場の中で最大の「山陰終末処理場」に、新たにバイオガス発電設備を導入することが決まった(図9)。下水処理の過程で発生する消化ガスを燃料に利用する。
1台あたり25kWの発電能力がある小型のガスエンジン発電機13台を設置して、2018年4月に運転を開始する予定だ。年間の発電量は270万kWhを想定していて、750世帯分の電力を供給することができる。地元のガス会社が中心になって発電設備を運営する。
下関市は消化ガスと用地を供給する代わりに、事業者からガスの使用料と土地の賃借料を得ることができる。このところ全国の下水処理場で同様のスキームによるバイオガス発電設備の導入が始まっている。山口県内でも各地域の下水処理場にバイオガス発電が拡大していく見通しだ。
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2016年版(35)山口:「太陽光発電でイチゴを栽培、世界初の竹バイオマス発電にも挑む」
2014年版(35)山口:「小水力発電をダムに展開、サイフォン式やバルブ式で水流を生かす」
2013年版(35)山口:「本州と九州のあいだで洋上風力、20基の大型風車が未来をひらく」
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